「共産党員になりたい」ジャッキー・チェンが香港・中国で嫌悪される理由

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 さらに2012年には「香港は抗議デモの町になってしまった……人々は中国や中国の指導者や、あらゆることに文句を言って、あらゆることに抗議している」とデモを非難(サウスチャイナ・モーニング・ポスト)。2014年の抗議活動「雨傘運動」でも彼の発言に注目が集まったが、「香港の抗議デモは、経済市場へのダメージが大きい。ニュースで知ったのだが、損失は3500億香港ドル(約450億ドル)に達したと聞いて、本当に心配している。理性を取り戻してほしい」と大方の予想通り、中国政府寄りだった(タイム誌)。

 また、2019年の「逃亡犯条例」改正案をめぐる反政府デモに際して、香港での長期にわたる大規模デモは「悲しくて、気が滅入る」と不快感を示した。その後、英語版中央テレビ(CGTN)のインタビューで「CCTV(国営中国中央テレビ)がSNSに『五星紅旗(中国国旗)には14億人の旗手がいる』と投稿したのを見て、私もすぐにリポストした」と語り、「香港と中国は、私の生まれた場所で私の故郷。中国は私の国、私は国を愛している、私の故郷を愛している。香港が早く平和に戻ることを願っている」と続け、中国を大絶賛(デイリー・メール紙)。これが香港の人々の怒りを買い「香港はあなたが嫌いです」「恥知らず」とSNS上で厳しく罵られた。

◆創立100周年、中国共産党を礼賛
 今回「共産党員になりたい」とした発言は、今年7月の中国共産党創立100周年祝賀イベントに出席した際に飛び出したもの(鳳凰網)。祝賀に関連する中国映画家協会の座談会で、イベントの演目を振り返り、抗日戦争で戦った部隊のステージを見て「涙がこぼれた」と称賛。「共産党員のあなたたちがとても羨ましい。共産党は実に偉大だ。私も共産党員になりたい」と笑みを浮かべて語る動画を国営中国中央テレビが報じた。

 しかしながら、中国大陸でもジャッキー・チェンは不人気だ。今回「党員になりたい」と発言した動画が報じられると、SNS上では「隠し子に、薬物使用の息子。ただれて腐敗した生活、とっくに共産党員の資質を備えている」「このクズ男は風見鶏だな。プライベートではすでに党員レベルだ」と皮肉る声や「不倫ばかりで気持ち悪い」「モラルが欠如している」「不合格」「アメリカの豪邸を売って、党費を払え」などと私生活にダメ出しする厳しい声が相次いで寄せられた(看中国ネクストシャーク)。

Text by 佐藤さとみ