困難のなかよくやった? 東京五輪、海外はどう見たのか
◆選手も理解、日本に感謝
コロナ禍での大会では、選手への影響も懸念された。英ガーディアン紙に寄稿したフェンシングのアメリカ代表、レース・インボーデン選手は、選手村での選手間交流がなかったこと、毎日感染を意識するストレスをあげ、期待とは違った五輪だったとした。IOCの運営には問題があったという考えだが、開催してくれた日本には感謝していると述べた。
東京2020の広報担当者は、アスリートのなかで競技に参加できなくなった人はその事実を受け止めるのがつらかっただろうと話していたが、選手はルールに従った。棒高跳びのサム・ケンドリックス選手は、検査で陽性となり競技をすることなく五輪を終えたが、「競技への愛があるから、この苦境と隔離を乗り越える」とソーシャルメディアでコメントした。(LAT)
米ポモナ・カレッジの准教授トム・リー氏(政治学)は、厳しい状況下で五輪を成功させる国があるとすれば、それは日本だったと述べ、非常に高い評価だ。ただその日本でさえも、思い描いた通りにはできなかったとしている。(NPR)
◆負債は軽い? 五輪効果はこれから
多額の費用が費やされたにもかかわらず、コロナで観光収入もなくなり、大会そのものも無観客となったことから、東京五輪では回収不能という声もある。日本には230億ドル(約2.5兆円)の損失が発生するといわれているが、NPRは5兆ドル(約550兆円)の経済規模に比べればたいしたことではないとしている。
米タイム誌は五輪を誘致・開催したことにより競技場、選手村を改装した住宅などの経済的レガシーも生まれ、観光客用に改装したホテルやレストランなどへの投資も将来的なインバウンド観光に貢献するとし、完全な失敗とは言えないと指摘する。
また、日本人選手の活躍で注目された競技も、経済活動の活発化に貢献しそうだとする。若い日本人選手が次々とメダルを獲得したスケートボードには大きな関心が集まっており、スケボーブーム到来の予感だ。また、東京大会では日本は過去最高の58個のメダルを獲得したが、そのうち33個は女性アスリートによるもの。金メダルも27個のうち15個を女性が獲得しており、女性の可能性が示されたとしている。(タイム誌)
揉めに揉めた東京五輪だが、大きな混乱もなく、終わってみれば実りある大会だったのかもしれない。全国の感染が拡大するなか、24日からはパラリンピックが始まる。安全な開催にいっそうの努力が必要となりそうだ。
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