隔離ホテルでのトレーニング動画が人気に 中国帰国の五輪選手たち
◆応援したくなる、アスリートの隔離生活
東京五輪に参加し、帰国後隔離生活を送っているのは、選手431人とメディア関係者を含めた合計777人の代表団だ(新華社通信)。競技が終了した順に北京や天津、湖北省などから入国している。
当たり前のように隔離生活を始めた選手たちは、休息を取るとの予想を覆し、狭いホテルの部屋でそれぞれ基礎トレーニングを始めた。重量挙げの金メダリストは、隔離生活用に配布された飲料水の段ボールに逆立ちをして見せ、ペットボトルでウエイトリフティングをする選手や、陸上選手のスクワット、腕立て伏せ、卓球選手のコアトレーニングなど、一流選手の「部屋でできるトレーニング」が動画配信されるようになると、人気が沸騰。「オリンピック選手による隔離エクササイズ番組が始まった」「本物の自己管理。私がやせない理由がわかった」とSNS上に賞賛コメントがあふれている。(チャイナ・ニュース)
トレーニングのほかにも、アスリートの素顔や別の才能が垣間見える動画も登場した。競泳男子200m個人メドレーで金メダルを獲得し、その外見と鍛え抜かれた体で人気爆発中のスター選手、汪順選手は、大食漢な素顔が露呈し一躍話題に。それでも「食後はトレーニング」と、半裸姿でのトレーニング動画は女性を中心にファンを熱狂させ、SNSの動画は627万回再生されている。ほかにも、ライブ配信で視聴者の質問に答える卓球選手や、ギターの腕前を披露する射撃混合エアライフル選手、CM契約のある企業との仕事にビデオで参加する「忙しい」アスリートも登場。それぞれが隔離生活を有意義に過ごそうと努力している様子が伺え、競技を終えた選手たちの隔離生活を今度は応援したい、とファンの心を射止めている(テンセントニュース)。
◆北京冬季五輪を見据えたメッセージ
国内での感染者ゼロを誇っていた中国だが、7月20日に南京空港の清掃スタッフが感染したのを皮切りに(チャイナ・デイリー)、デルタ株による感染者が報告され始めている。来年2月の北京冬季五輪開催まで6ヶ月を切ったいま、何としても感染ゼロを貫きたかった中国政府としては悩ましい問題だ。
だが一方で、対処も素早い。東京からの帰国者の到着に備えて、北京首都国際空港がある北京市順義区では30社区に暮す15万人を対象に、毎週PCR検査を実施。22のホテル5071部屋が、万が一の陽性者の発生と濃厚接触者の隔離用に準備された(グローバル・タイムズ)。五輪期間中から継続して、感染が爆発的に拡大している東京に滞在していた五輪代表団の帰国は、危険度が高いと見られているからだ。
今回、東京五輪参加者たちを特別扱いしなかったことで、中国政府は国民に「鉄壁の隔離政策」を改めて示すことができた。また同時に、北京冬季五輪を控えた海外の参加者に対しても「特別扱いはない」というメッセージを発信する意味もある。冬季五輪の観客の有無、選手たちの隔離をどうするのか、新たに広がりつつあるデルタ株との闘いのなかで、模索している北京。世界の注目は東京から北京へシフトしている。
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