五輪メダリストへの報奨金はいくら? 家、車、特別待遇も

フィリピンのヒディリン・ディアス選手|Luca Bruno / AP Photo

◆国により額に大差 メダルがもたらす利益も
 CNBCは12ヶ国の報奨金の額を報じている。小国や途上国のほうが主要先進国よりも高い傾向だ。これによれば金メダリストへの報奨金の最高額はシンガポールの73万7000ドル(約8107万円)。次にカザフスタン(約2750万円)、マレーシア(約2596万円)、イタリア(約2343万円)、フィリピン(約2200万円)、ハンガリー(約1848万円)と続く。

 最も高いシンガポールの報奨金は課税の対象となり、次の世代のアスリート育成のために一部を国のスポーツ協会に寄付することが定められている。シンガポールやインドのような国ではスポーツの政策が国主導で進められており、高い報奨金を出すことでスポーツ振興につなげようとする傾向があるという。

 日本の金メダリストに贈られるのは500万円だが、アメリカは約413万円、カナダは約176万円、オーストラリアは165万円となっている。額としては、金メダル報奨金上位国が銀メダリストに贈る報奨金よりずっと少ない。

 しかしアメリカをはじめこれらの国々では、メダル獲得で有名企業のスポンサーとの契約が期待できる。アメリカの体操のシモーン・バイルス選手は2016年のリオデジャネイロ五輪で4つの金メダルを獲得。東京大会では心の問題で競技を棄権してしまったが、ニューズウィーク誌によれば、さらに5つのメダルを取る可能性があると注目されていた。すでにハーシーズ、ケロッグといった大型スポンサーと契約を結んでおり、メダルの報奨金以上の収入を得ていたことは想像に難くない。

◆実際の価格は数万円 のちに高額落札も
 選手へのボーナスは現金だけではない。アメリカではアスリートには健康保険や、一流の医療施設へのアクセス、大学の学費援助などが用意されている(CNBC)。兵役を免除する国もあり、ロシアのプーチン大統領はメダリストに高級車を贈ったこともある(水泳専門サイト『Swim Swam』)。

 メダルの材料から割り出した価値は、東京大会の場合は金メダルが810ドル(約8万9000円)、銀メダルで550ドル(約6万円)ということだ。ちなみに金メダルでもほとんどが銀でできており、IOCの規定では最低6グラムの金が含まれていればよいとされている。

 もっとも、大会後に価値は大きく変わることもあるとカナダのナショナル・ポスト紙は指摘する。ウクライナの元ヘビー級ボクサー、ウラジミール・クリチコが1996年のアトランタ大会で獲得した金メダルは100万ドル(約1億1000万円)、ベラルーシのフリースタイルスキー選手、アレクセイ・グリシンのバンクーバー冬季大会のメダルは5万5000ドル(約600万円)でオークションに出されて落札された。いずれの出品も寄付や援助が目的だった。やはり五輪のメダルの価値は特別だと言えるだろう。

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Text by 山川 真智子