オペラ、ミュージカル、コンサート……舞台芸術再開に高いハードル
◆徹底対策で成功、有名音楽祭の挑戦
感染の危険から、コンサートやオペラ、ミュージカルなどのイベントが世界的に開催中止となるなか、オーストリアではザルツブルク音楽祭がこの夏決行された。このイベントには、毎年世界トップクラスのアーティストが招かれ、世界中からファンが集まる。規模は大幅に縮小されたものの、100周年となる今年、運営側は感染対策を徹底させることで開催可能と判断し、綿密な計画のもと準備を始めた(オペラ関連サイト『Operawire』)。
音楽祭のスタッフは赤、オレンジ、黄色の3グループに分けられ、グループごとに安全対策や規則が定められた。赤グループには出演者が属し、稽古やリハーサル以外ではマスクを着用し、大きなイベントや人混みを避け、毎日の健康状態と音楽祭関係者以外との接触を記録することが必須となった。感染の有無を確認するため全員に10日に1度の検査を実施。訪ねてきた家族にも検査を義務付け、稽古場がある建物へのゲストの訪問は一切禁止された。
運営に関わる委員や役員などはオレンジグループ、客と直接接する警備員、チケット係、清掃係などのスタッフは黄色グループに属し、それぞれに徹底した感染防止対策が課せられた。客を迎えるホテルやレストランなども「安全な音楽祭」という共通の標語のもとに連帯した。観客にも演奏中以外はマスク着用、距離の確保が求められ、席の間隔を空けるため収容人数も削減された。チケットの購入は記名式で入場の際には身分証明書の提示が必須となった。休憩なし、カフェや売店もなしで、ブラボーなどの掛け声禁止、拍手のみが許可された。
ウェブ誌『Vox』によれば、音楽祭には7万6000人が来場。準備期間に1人の陽性者が出たが、開催期間中は1人の感染者もなかったと報告されている。今年の収益は通常の4分の1だったが、開催は利益よりも文化維持のためだったとOperawireは説明している。
◆対策コストが負担に 舞台再開はいつ?
ザルツブルクの成功に背中を押され、ウィーン国立歌劇場も、9月から屋内での公演を再開した。ザルツブルグと同様の厳しい感染対策を取り、いまのところアウトブレイクは起こっていない。もっとも安全な再開は、芸術保護のために潤沢な政府の資金が投入されたからだとVoxは述べる。残念ながらほとんどの舞台芸術は規模も小さく、国家のサポートを期待できる団体はわずかだ。長期に渡る舞台や興行で、ウィーンのような対策を取ることは、民間だけでは経済的に困難だろう。
欧州各地では公演が行われているが、契約があっても、感染状況の悪化でいつ仕事がなくなるかわからないため、アーティストの経済状況は不安定だ。さらに感染対策も自分でするしかないとVoxの取材に答えた歌手は述べており、職場で検査は受けられず、自分と同僚は集団免疫に頼るしかないとも話している。
ブロードウェイでは、舞台に立っていた俳優やマネージャーなど1100人以上が職を失い、多くが失業手当で暮らしているという。俳優労働組合のスポークスマン、ブランドン・ロレンツ氏は、舞台の再開は、より厳しい全国規模での検査戦略が取られ、ウイルスをうまくコントロールできるかどうかにかかっていると述べている(CNBC)。
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