『グリー』女優、アメフト選手……反差別運動でセレブが槍玉に 「見えない人種差別」露呈

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◆アメフト選手「国歌斉唱時の膝つき反対」で炎上
 エンターテイメント界だけでなく、スポーツ界でもアスリートたちの発言が槍玉に上がっている。NBCの番組『トゥデイ』(電子版)によると、ロサンゼルスを拠点とするプロサッカークラブのLAギャラクシーは、同クラブに所属するセルビア人のアレクサンダー・カタイ選手の妻がソーシャルメディアに、今回の抗議デモと暴動参加者について「クソ野郎どもを殺せ」「汚らしい家畜」などとセルビア語で投稿したことを問題視。同選手は謝罪声明を公表したものの、クラブから解雇された。この件については、妻の発言で夫が処罰された結果となったが、同時に妻がこのような意見を持っている場合、夫であるカタイ選手とも家庭で同様の会話があったと推測されるため、とも読める。

 リベラル派、そしてマイノリティ人口が多い大都市ロサンゼルスで、このような人種差別・暴力的意見をソーシャルメディアに投稿した家族を持つ選手を所属させておくのは、LAギャラクシーにとって大きなマイナス要素であることは間違いない。東欧セルビア出身のカタイ夫妻(とくに妻)は、アメリカの繊細な人種問題のニュアンスが読めず、人種差別発言や行動に対する厳しい対処を甘く見ていたのかもしれない。

 一方、アメリカンフットボールチーム、ニューオーリンズ・セインツのドリュー・ブリーズ選手もタイミング悪く失言をして槍玉に上がった。ピープル誌(電子版)によると、ブリーズ選手は、国家斉唱時に膝をついて警察の暴力に抗議する選手について6月3日、「アメリカの国旗に対して失礼な人々(の行動)には同意できない」と発言して大炎上。

 ブリーズ選手に悪気はなかったと思われるが、国家斉唱時に膝をつく行動はコリン・キャパニック選手が2016年に警察による黒人への暴力について抗議するために始めたもので、国歌や国旗を侮辱する意味で行われているわけではない。今回の抗議デモではまさに警察による過剰暴力問題に焦点が当たっていることから、ブリーズ選手の発言は黒人を含むマイノリティの神経を逆撫でした。しかし、ブリーズ選手は速やかにインスタグラムに謝罪文を投稿し、チームメートとも話し合いの機会を持って、事態はどうやら解決の方向に進んでいるようだ。

 アメリカにはいま、黒人差別反対の意見をソーシャルメディアに投稿したり、抗議デモに一緒に参加したりする白人セレブも多い。しかしどんなに同情的でも、優遇される立場にいる白人にとって生まれたときから人種差別にさらされるマイノリティの立場や気持ちを心の底から理解することは不可能だ。どんなに感動的な意見を述べても、それは自分自身が安全な場所にいる状態から語る「上から目線」であることが多い。

 ジョージ・フロイドさんの事件後、セレブのこのような行動や発言で明らかになってきているのは、暴力・暴言などあからさまな人種差別だけではなく、無知、そして目に見えない優越感から来ているニュアンス的人種差別の存在である。

Text by 川島 実佳