英名物司会者の日本探訪記が面白い! Amazon『James May: Our Man In Japan』

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♦︎奇祭に圧倒される
 北海道を後にしたメイ氏は、東北での温泉体験などを経て、首都圏に達する。川崎で彼が出会ったのは奇祭・かなまら祭だ。これは毎年4月に開かれる全国的にも有名なイベントで、男性器を模した複数の神輿が市街を練り歩く。道端の露店には男女の隠部をかたどったアメなどが並び、性にオープンな雰囲気のなか子孫繁栄への願いが捧げられる。男性器の神輿を担ぐのは恥ずかしくないかと無邪気に尋ねるメイ氏だが、主催側から「恥ずかしいけれども必要なことです」としごく真面目な顔で返されたのは計算外だったようだ。

 このように、ときおり見られるメイ氏の茶目っけは番組の良いアクセントになっている。古き時代から受け継がれる日本の美に心酔したかと思えば、愛らしいロボット型の観光案内器を突如レンタルし、首から下げてご満悦の表情を見せる。テクノロジーや先端のカルチャーにも敏感な氏は、仙台でJ-POPグループのライブを観覧したり、秋葉原でガジェットに没頭したりしながらディープな日本を芯まで味わい尽くしてゆく。

♦︎イギリス人が最も異国を感じられる場所
 メイ氏は番組の撮影以前にも日本を度々訪問しており、今回のシリーズの企画も氏自身がAmazonに持ち込んだものだ。イギリス人である彼が日本の文化に魅力を感じる理由は、イギリスでの暮らしと比べて何もかもが新鮮に感じられるという点に尽きるだろう。米ディサイダー誌はドキュメンタリー中のメイ氏の独白から、「(日本は)イギリス人から見れば最も異国な旅行先だ。すべてが少しだけ馴染みがなく、少しだけ驚きを与えるようであり、そして誤解を恐れずに言えば、困惑させるようでもある」という一言を紹介している。

 日本を舞台にした旅行ドキュメンタリーとしては、富士山や桜など、いかにもよく知られた日本のシンボルを取り上げるものが多い。本シリーズでも温泉や刀など知名度のある題材を扱っているが、旅行者の視点から楽しむというよりは、現地に生きる人々と密にコミュニケーションを取る姿勢が強く感じられる。東北では凍える山のなかの参拝路を僧侶とともに歩んだり、古都・京都では芸者から直接三味線を習ったりと、日本に住む私たちでもなかなか触れる機会のない伝統に親しんでいる。英ガーディアン紙は「これが単なる紀行ドラマでないことをメイ氏は保証している」と述べており、ステレオタイプに縛られず、ローカルな文化を現地の日本人とともに体験する姿勢が視聴者に受けているようだ。

 全6話で贈る本作は、映画情報サイトの『IMDb』において10点満点中9.2点の高評価を獲得している。現在はアメリカやイギリスのAmazonで公開されており、日本での配信が待たれるところだ。

Text by 青葉やまと