カタールのサッカーW杯は大丈夫? 世界陸上で問題露呈、上がる心配の声

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◆プロリーグのシーズンとバッティング ファンは来るのか
 W杯の暑さの問題は解決したようだが、強く懸念されているのが集客力だ。世界陸上では、初日は70%、2日目は67%の席が埋まったと運営側は発表したが、観客席の空席が目立ち、これではW杯の客席も埋まらないのではないかと心配されている。カタール側は、サッカーのほうがファンは多いと説明している。国際サッカー連盟(FIFA)は、どこへでも出かける熱狂的なサッカーファンに期待しているということだが、APはこの大会が他とは条件が違う点を指摘する。開催時期を11月~12月にしてしまったため、欧州クラブチームのシーズンと重なってしまう。ファンであれば、毎年の習慣を変えるのを嫌がる人も多いだろうと見ている。

 世界陸上では近隣国からのファンを期待していたが、実はカタールはお隣のアラブ首長国連邦とその地域同盟国と断交中で、これが集客にも影響したと見られている。FIFA側でも仲を取り持つ努力をしたようだが、亀裂はかなり深く、W杯のための和解は難しいということだ。運営側はファンが1日に複数のゲームを見てくれることを期待しているという。スタジアムはコンパクトに近隣地域に建設されており、新設のメトロシステムで会場間の行き来に時間もかからないことから、世界陸上よりチケットを安くし、より多くの観客を集める計画だ(AP)。

◆ビールも自由に飲めない? 厳格主義がネック
 カタールの文化的、宗教的特徴もファンにとってハードルになるかもしれない。公共の場での飲酒はできず、一部のホテルにしか酒類のサービスはない。国外からの持ち込みも禁止だ。ショッピングセンターには女性はタンクトップや短パンの着用禁止のサインがあり、同性愛も違法となっている。カタールのW杯責任者は、運営側は他国の文化、性的嗜好、宗教には寛容であることを誓うとしているが、ブルームバーグはカタールの厳格主義が試される大会になりそうだとしている。APは、サッカー観戦以外には青空市と砂漠ぐらいしか見どころはなさそうだと述べ、観光地としての魅力に乏しいことも指摘している。

 ロイターによれば、カタールは2030年のアジア大会招致を検討中ということだ。APは、今後の招致を成功させるには、カタールがファン文化を持ち、スタジアムを満杯にできる力があるということを世界に認めてもらう必要があるとしているが、そもそも今年の世界陸上、2020年のW杯に関しては、賄賂、汚職、人権侵害などがあったとされる。物議を醸してきただけに、立候補となれば世界のカタールに対する目は厳しくなりそうだ。

Text by 山川 真智子