もともと真夏の東京は無理……IOCのマラソン場所変え案、海外から批判の声

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◆いまさら暑さの心配 以前から問題視
 もともと東京の暑さについては、以前からメディアが危険だと警鐘を鳴らしており、今回のIOCの発表の数日前にも、いくつかのメディアが7月24日から8月9日までという酷暑の真っ最中での開催に疑問を呈していた。

 ウェブ誌『Slate』は、この期間の今年の東京の平均気温は33.3度で、湿度は平均で80%以上に達したと伝える。2万人以上が暑さで病院に運ばれ、70人が死亡しているが、果たしてこの状況で競技スポーツをし、50万人の観光客を同様の状況に置いて大丈夫なのかと述べている。

 ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)も、「梅雨明け後の2ヶ月はまるで巨大サウナの中に座っているようだ」という日本在住のジャーナリストのコメントを紹介。東京五輪組織委員会が、莫大な金額をかけて対策を講じようとしているが、テントやミストシャワー、うちわ、サンバイザー、袋入り氷では焼け石に水だと見ている。また、マラソンコースを、表面温度を下げる特殊な素材で覆うという考えに対しても、頭の高さになれば冷却効果はほぼないとした政府の分析結果を紹介している。

 同紙は、この夏の東京五輪のテストイベントのトライアスロンで、暑さのためにランニング部分が半分にされたこと、また今年カタールのドーハで行われた世界陸上では、真夜中に行われた女子マラソンで40%がリタイアしたことを上げている。選手の負担の大きさはもちろんのこと、ここに東京の夏に慣れていない数百万人のファンや、その3分の1が50歳以上といわれる数千人のボランティアが加われば、心配はさらに大きくなるとしている。

                                                                                                                 

◆平和の祭典も収入が大事? 真夏開催へのこだわり
 NYTは、1964年の東京五輪は10月開催だったとし、来年の東京五輪が同時期に開催できないのは、アメリカで五輪放映権を持つNBCのためだと述べる。実はIOCの収入の4分の3は放映権から来ており、そのうち半分はNBCが払っている。アメリカでは9、10月は野球とアメフトのシーズンで、比較的空いているのが7、8月だ。2000年の9月後半に行われたシドニー五輪は、アメリカにおいてはこの数十年間で最も視聴率の低い大会となり、以来IOCは夏の五輪は7月15日から8月31日開催と候補都市に伝えているという。

 実は2020年開催に立候補したドーハは、IOCからの評価がもっとも高かったが、10月開催を主張したことから外されている。NYTによれば、このとき東京はIOCの希望に合わせ「温暖で晴れの日が多く、この時期はベストを出すにはアスリートにとって理想の気候」と7、8月開催で提案。IOCも「提案された時期の天候は妥当だろう」と結論づけた。当時はほとんど天候を考慮しなかったのに、いまになって話題の中心となっている、と同紙は批判的だ。

 Slateは、どんなに対策をしても、これまで熱中症になった人の数を考えれば、東京五輪で暑さによる犠牲者が出るのは明らかだとする。温暖化が進むなか、東京五輪が初の気候変動がもたらした災難を放映する五輪になる可能性もあると述べる。

 札幌案の実施については、開催都市の東京、国際陸連、各国および地域のオリンピック委員会、オリンピック放送機構、放送権を得た放送機関を含む、すべての利害関係者とともに協議するとしているとIOCは発表しており、結果が注目される。

Text by 山川 真智子