「言葉を失うほど美しい」『天気の子』海外メディア批評 アジア、オセアニアで封切り

(C)2019「天気の子」製作委員会

◆実写のような背景が圧倒
 さて、新海作品といえば、多くのシーンに二つのアートスタイルが共存する点が特徴だ。キャラクターは一貫してスタイリッシュなアニメタッチで表現される一方、背景美術は写真のようなリアリズムに満ちている、と豪ジ・エイジ紙はコメントしている。

 このようなリアルなアートスタイルが際立つ『天気の子』は、東京・新宿のありのままの空気感を海外の観客にも届けている。「新海作品は衝撃的にまでフォトリアルな風景で名高い」と紹介するのはマレーシアのスター紙だ。本作ではリアルな描写を通じて、好奇心をくすぐる楽しい街という新宿の一面だけでなく、生きるためのダークなビジネスの存在も包み隠さず伝えている。ファンタジー作品の枠を超えた、予想外に現実的なアートスタイルと描写が海外の興味を引いているようだ。

 バンコク・ポスト紙も、CGと手描きを融合させた本作の出来栄えは「言葉を失うほど美しい」と絶賛している。フォトリアルに再現された新宿の街並みとそこに降り注ぐ雨は、ときに実写作品と見まごうようだと述べる。映画館の大スクリーンで見る価値は大いにある、と同紙は断言している。

(C)2019「天気の子」製作委員会

 新海誠最新作『天気の子』は、国内主要劇場で現在公開中だ。ちなみに東京・松屋銀座では、9月25日から10月7日まで、本作の資料展『「天気の子」展』の開催を予定している。すでに観た方も、もう一度作品世界に浸ってみるのも良いかもしれない。

Text by 青葉やまと