最新のファッショントレンド「モデストファッション」とは

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◆ファッションを通してのインクルージョン
 モデストファッションのトレンドからも分かるように、世界の動きをキャッチするのが格段と早いファッション業界はいま、多様性を取り入れる「インクルージョン」に関心が高い。ある特定のものを一方的に「かっこいい」と示すのではなく、さまざまなアイデンティティを尊重し、いままで存在しなかった、または認識させられていなかったものにスポットライトを当てている。

 近年では、ヒジャブを身につけたスーパーモデルがファッションショーのランウェイを歩き、さまざまな有名ブランドもモデストファッション向けの製品開発やインフルエンサーとのコラボレーションをしている。ソマリア系米国人ハリマ・アデンさんは、ヒジャブを着用してVOGUEなどの雑誌の表紙を飾っている。彼女は、「ミスUSA」のミネソタ州代表を決めるコンテストで初めてヒジャブを着用し話題になり、現在大手モデル会社と契約している。ファッションブランドでは、アメリカン・イーグル・アウトフィッターズは、デニム生地でのヒジャブを開発し、オンラインで1週間以内に完売した。また、米スポーツブランドのナイキは、2018年春に通気性の良いメッシュ製ヒジャブを発売した。

◆モデストファッションがトレンドになる意味
 決められたルールのなかでのモデストファッションを、女性が抑圧されていると考える人もいるかもしれない。しかし、モデストファッションのデザイナーたち作り手も、それを着る消費者も、女性たちはみな宗教や信念を超えた、自分を表現する一つの方法としてモデストファッションを選んでいる。それはモダンでクールなスタイルをそれぞれの解釈と着こなしで楽しんでいる彼女らを見ればわかることだろう。モデストファッションがトレンドになる、それは女性へのエンパワーメントである。いままで存在していても、見落とされてきた価値がようやく認められるようになった証である。

 ファッション業界では人種や宗教にとどまらず、サイズや体型、さまざまなバックグラウンドを持ったモデルやインフルエンサーが活躍するようになっている。ラテン系の女性、プラスサイズの女性など、彼女らはいままでロールモデルが存在しなかった若い女性に勇気を与えるだろう。このような「インクルージョン」の動きがきっかけとなり、ファッション界に限らず、ほかの業界やビジネスの世界でも、性別や年齢、人種に縛られない考えが広がっていくことを後押ししている。

Text by sayaka ishida