こんまり通訳の飯田さんがすごい! 「ブームの陰の立役者」と米メディアも賞賛

Denise Crew / Netflix via AP

◆数秒で最高の表現を 良い通訳は目立たない
 クオーツは、「近藤さんの、ときには風変わりで長々と続く話をよどみなく伝え、話者の元気なエネルギーを物まねになることなく正確に映し出す飯田さんの能力には、日本語のネイティブスピーカーでさえ驚かされる」と述べる。

 飯田さんが行っているのは、話者の話を区切って訳す「逐次通訳」だ。本人いわく話し手のしゃべりを聞きながら訳す同時通訳よりはプレッシャーは低いが、それでも話者の伝えたいことにもっとも合った言葉を数秒で探し出すのは大変な作業だという。飯田さんの場合は、常に近藤さんの語調や気分を正しく伝えることにも注意を払う。抑揚、表現、ユーモアなどの微妙なニュアンスが、会話全体の感じを変えてしまうこともあるからだ。近藤さんの人柄や性格を正しく言葉に載せることは、難しいがやりがいのあることだと、飯田さんは『インサイダー』に語っている。

 飯田さんの名前は近藤さんと同じ「まりえ」だ。年齢も1歳違い(飯田さんが年上)で背丈も同じぐらいであるため、偶然の類似点が注目されることもある。しかし、飯田さんは番組の現場では自分を「飯田」と紹介する。「まりえ」と名乗ることで、二人の共通点が話題になり、番組の時間が無駄になることを避けるためだ。さらに番組では近藤さんと出演者の関係が大切だと考えているため、出演者と私的な会話をあまりしないように努めているという。常に控えめな飯田さんが考える良い通訳者とは、存在が忘れられてしまうほど目立たず背景に溶け込むことのできる人ということだ(クオーツ)。

◆ペアだからこそ得られた共感 ブームの陰のヒーロー
 近藤さんとの関係について尋ねられ、飯田さんは、常に二人でいることにお互い勇気づけられていると述べる。収録先に向かう車の中で、下車する前に二人は「よろしくお願いします」と声を掛け合う。この一言には、仕事のためにお互いの身を委ね、信頼し合うという意味があると飯田さんは理解している。そして礼儀正しく、日本人ならではのこの言葉を近藤さんが発すると、自分はいつも笑顔になるのだと話している(クオーツ)。

 最近では、アメリカの著名な作家であるバーバラ・エーレンライク氏が、近藤さんが英語を話さないことは大国アメリカの衰退を意味するとツイートして話題となった。これには多くの人々から人種差別的だという批判があり、むしろ英語を話さないアジア人の近藤さんから、アメリカ人が一生懸命学ぼうとしていることに希望が見えるという反論が出ている。

 近藤さん自身は、通訳を通じた英語でのアドバイスを、アメリカ人が深いレベルまで理解してくれるのか不安だったとピープル誌に語っている。片づけという行為が媒介となり、人々と繋がることができ、自分の意図もよく理解してもらえたと述べているが、やはり飯田さんとのペアでなければ、アメリカ人や世界の視聴者から、ここまでの共感は引き出せなかっただろう。クオーツは、飯田さんこそ「こんまり現象」の陰のヒーローだとしている。近藤さんの魅力を最大限に表現するその素晴らしい仕事ぶりは今後も注目を集めそうだ。

Text by 山川 真智子