1週間で140万部、オバマ夫人の回顧録 「トランプ氏許さない」と批判も

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 バラク・オバマ前大統領のファーストレディー、ミシェル・オバマ氏が13日、初の回顧録「Becoming」を発売した。自身の生い立ちやホワイトハウスでの生活、子育て、オバマ氏との夫婦関係などを綴った著書は、発売後1週間で140万部という近年見られない驚異的なペースで売れている。

 2017年にオバマ前大統領が任期を終えてトランプ現大統領が就任した後、政治に関してほとんど発言していなかった前ファーストレディーだが、あらゆる出来事を正直に語った回顧録のなかでトランプ氏を批判。著書発売直後にアメリカ国内で各メディアに大きなニュースとして取り上げられた。

◆トランプ氏による陰謀説を「絶対に許さない」
 トランプ氏とオバマ氏といえば、真っ先に思い出すのが「バーサー」と呼ばれるオバマ氏の「出生地(または国籍)陰謀説」である。トランプ氏はオバマ氏が大統領在任中、オバマ氏の出生地がハワイ州ホノルルではなく、ケニアであるとツイッターなどでしつこく発言した。

 オバマ氏の父親はケニア人だが母親はアメリカ人であるから、どこで生まれてもオバマ氏がアメリカ人であることに変わりはないが、アメリカ憲法では、大統領に就任できるのは「Natural Born Citizen」だけと記載してある。

 しかし、この「Natural Born Citizen」の解釈が明記されていないことから、外国で生まれた米国人に出馬資格があるか否かが問題になっているのだ。つまり、現在の解釈ではっきりと「Natural Born Citizen」と言えるのは米国内で生まれた米国人だけということになり、トランプ氏はオバマ氏がケニア生まれだと主張することで、大統領職に就く資格に疑問を投げ掛けていたのである。

 しかし2016年の大統領選の共和党予備選で、カナダ生まれでキューバ人の父親を持つテッド・クルーズ上院議員が出馬した際、共和党からは何の反対もなかったことを考えると、オバマ氏を取り巻く騒動自体が政治的で人種差別的であることが分かる。

 11月9日付のニューヨークタイムズ紙の記事によると、ミシェル夫人は著書のなかで、トランプ氏がオバマ前大統領の出生地に疑惑を投げ掛けたこの「バーサー」騒動が「狂っていて意地が悪く、もちろんその根底に外国人嫌悪があることを隠してもいない」「ドナルド・トランプはそのけたたましく向こう見ずな当てこすりで、私の家族の安全を危険に晒した。そして、そのことで私は絶対に彼を許さない」と厳しく批判。また、「現大統領の言動や政治的アジェンダが、多くのアメリカ人に自分自身を疑い、またお互いを疑い、怖がる原因になったことは痛ましいことだ」と述べている。

Text by 川島 実佳