海外でカルト的人気の塚本晋也監督 最新作『斬、』は『鉄男』のイメージ変える?

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◆独自性を貫くベテランとしての姿に注目するメディアも
 塚本監督が、『野火』とも共通する意図から時代劇を選んだのは、泰平の世が続いてきた幕末と今の日本とに、戦争の危機など共通する問題を感じたためだという。多くの欧米メディアとは逆に「カルト監督」の面には触れなかった韓国・聯合ニュースは、釜山国際映画祭での監督の発言から、この意図にまず着目した。また、これまで一貫して演技・演出・脚本・撮影・編集まで監督自ら務めてきたこと、今作では58歳の監督が数ヶ月間剣術を習って演技に挑んだことも伝えた。

 同じく釜山での発言を報じた米Variety誌も、近年、塚本が描いている反戦・反暴力に目を配った。このテーマ性ゆえにベテランながら低予算制作を余儀なくされているが、信念に忠実でいたいと「58歳の塚本が」述べたことも記事で強調している。

◆日本では一般に知られていないカリスマ性
『鉄男』とは作風がまるで異なる『斬、』が、ヴェネチア・トロントの大舞台で上映された後も、『斬、』には一切触れずにSF映画のカリスマとして塚本監督を取り上げたメディアもある。『Geek.com』は、サイバーパンク特集で、各エンタメジャンルの30年を振り返り、映画の代表作として『鉄男』を紹介した。

 このように、『鉄男』のイメージは今なお海外で根強い。一方、過去にヴェネチア国際映画祭の審査員を2度務めた塚本監督は、映画界でも広く尊敬を集める存在だ。今回、ヴェネチアで審査員長を務めたギレルモ・デル・トロ監督はツイッターで、暴力の意味を問う『斬、』のテーマを「パンクな『鉄男』に通ずる」とコメントした(10月8日)。時代に即して「人の命を奪うものへの反対の意志」を映画で表明するスタンスは、「カルト監督」のイメージを変えつつあるのかもしれない。

Text by 伊藤 春奈

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