「今年の英単語」で振り返る2017年 60年代を彷彿とさせる語が1位に

Kenneth Moyle / flickr

 毎年恒例、年末のお楽しみといえば「ワード・オブ・ザ・イヤー」つまり「今年の一語」の発表だ。なかでも、最も注目度の高いものがオックスフォード英語辞典のワード・オブ・ザ・イヤーだが、例年より遅く発表された今年のそれは「youthquake(ユースクエイク)」だった。

 youth「若さ」とquake「揺れる(こと);[口語で]地震」を組み合わせた語で、earthquake「地震」とも語呂が合う。しかしながら、とくにアメリカではほとんど知られていないようだ。なぜそのような言葉が「今年の一語」に選ばれたのだろうか?

                                                                                                                 

◆新しい言葉ではない
 オックスフォード英語辞典はこれを「若者の行動や影響によって起こる意義深い文化的、政治的、社会的変化」と定義する。今年は世界で重要な選挙が続き、とくにイギリスはBrexitなどで波乱の一年だった。その結果、これまでは虚栄心が強い、自堕落などと、あまりいい印象で語られてこなかったミレニアル世代が政治的に目覚めることになった。

 youthquake自体は新しい言葉ではなく、1965年にアメリカ版ヴォーグ誌の編集長が考案したとされる。60年代といえば、ビートルズやストーンズが台頭したり、マリー・クヮントが超ミニスカートを発表したりと、とくにイギリスで若者が(世相を反映して)大活躍した時代だった。80年代には、イギリスのロックバンド、デッド・オア・アライブが『Youthquake』というタイトルのアルバムを出している(筆者も持っていた)。

 ところが、この語はほとんど知られていないようだ。ワシントン・ポスト紙は、「一度も聞いたことがない」というイギリス在住者のツイートも紹介している。ただ、ワード・オブ・ザ・イヤーは必ずしも「最も流行った言葉」である必要はないようだ。ときにはまじめなもの、ときには遊び心あるものだが(2015年に「絵文字」が選ばれたのは記憶に新しい)、肝心なのは過去12ヶ月の気風や精神を反映する言葉であることだ。youthquakeはこれから育っていく言葉であり、「難しく、分断された時代」の希望の象徴であると、オックスフォード辞典部門長はブログで述べている。

 要するに、「ミレニアル世代の政治的目覚め」のyouthquakeには、「今年の流行り」というよりは、今後のミレニアル世代の活動に期待が込められているようだ

◆検索された「feminism」「complicit」
 一方、ウェブスター辞典の1位はfeminismだ。こちらも60年代を彷彿とさせる。1年を通して常に頻繁に検索されてきたというが、とくに検索率の上がった時期は、1月にワシントン D.C.を皮切りに全世界で繰り広げられたウィメンズ・マーチのときや、本誌でも紹介したHuluのシリーズThe Handmaid’s Tale『侍女の物語』の公開時などだった。最近では#MeToo運動だろう。

 また、ウェブスター2位のcomplicitはDictionary.comのワード・オブ・ザ・イヤーでもある。「(違法行為などで)共犯の、共謀した」という意味だが、トランプ政権にまつわる数々の疑惑に絡んでいるようだ。しかしながら、検索率が最も上がったのは、3月に政治風刺で大きな盛り上がりを見せていたサタデー・ナイト・ライブで、「Complicit」という名の香水のパロディ・コマーシャルを放映したときだ(これらのすべてを止められるのに……止めないあの女のための香水)。イヴァンカ夫妻がはたしてどれだけホワイトハウス内での出来事に関わっているのかについての風刺だったが、その1週間後に彼女が質問に対して「共謀者であるという意味がわからない」と答えると、検索率はふたたび急上昇した。

 その他、ウェブスターには5位に「Dotard(老いぼれ)」も入選している。金正恩がトランプ大統領をこう呼んだのだが、今ではほとんど誰も知らないような古語が使われたのは、北朝鮮で使用されている英語辞典が長いこと改訂されていないからではないかと言われている。

 ちなみに、コリンズ英語辞典のワード・オブ・ザ・イヤーはfake newsだった。

◆post-truthはもう古い?
 その他、レイク・スペリオール州立大学は毎年、過度の使用・誤使用が目立つ「お払い箱の語」を選んでいるが、今年のリストには昨年のオックスフォードのワード・オブ・ザ・イヤーだったpost-truthが入っている。

 また、ワード・オブ・ザ・イヤー関連ではないが、ごく最近オックスフォードのエントリーで話題になったものに「man-flu(男インフル)」がある。毎月の月経痛や出産の痛みなどに耐えなければならない女性に比べ、ちょっとした症状でも大騒ぎする男性の姿がイラっとくるのは世界共通のようで、とくに女性たちに大受けした。だが、忍耐力がないからではなく、女性より免疫系が弱いなど生物学的な理由で実際に男性の方に重く出る・感じられる症状があるかもしれないので、過剰反応しているといって男性を批判するべきではない、という医学的反論もガーディアン紙などが報じている。

 ここ数年、mansplain「男性が女性に(偉そうに)説教すること」、manspreading「公共の交通期間で男性が股を開いて座ること」、man-flu など、man「男性」関係の単語が次々に誕生している。来年はどんなman語が登場するのだろうか。

Text by モーゲンスタン陽子

Recommends