「音楽を習うと子供が利口になる」という証拠はない

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◆現実を受け止めるとき
 これまでの研究では、子どもに音楽の演奏法を学ばせることで、その子の人生で別の領域に好影響を与え、教育上の利点をもたらすと主張するものが多い。音楽教育は知性や記憶といった一般的な認知能力を「高める」ことができ、音楽以外の認知能力や学力を発達させるのに役立つと考えられてきた。

 この現象は「学習の移転」として知られており、特定の分野で獲得したスキルが他の一般的な認知能力を高めるのに役立つというものだ。そして学習とは、子供の人生におけるある領域から別の領域へ「移転」されると言われている。以前は、たとえば楽器演奏を学ぶことで子どもの数学力を高めるという主張がなされている。

 しかし、我々の再調査では、音楽学習が子供の認知能力や学力を確実に高める、とは言えないことが示されている。音楽技能と優れた認知能力との間にあるのが単なる相関関係である可能性があるからだ。

 簡単に言えば、人はピアノ演奏や合唱での歌唱法を学んでいるからといって、必ずしも賢くなるとは限らない。それよりはむしろ、賢い人は音楽などの知的活動に従事し、それに秀でている傾向がある。音楽家は一般の人より賢いかもしれないが、だからといって音楽技能が他の能力に移転すると証明されたわけではない。

Text by The Conversation