ネットフリックス、ナイキのトレーニング番組を開始 新開拓で目指す継続成長

Nike

 昨年12月末、ネットフリックスはナイキと連携し、トレーニング用コンテンツ配信を開始。新たなコンテンツ配信の狙いとは。

◆新たな領域に参入
 ネットフリックスに新たに登場したコンテンツは、ナイキ・トレーニング・クラブ(Nike Training Club:NTC)が提供する30時間分のエクササイズ・プログラムだ。現在、10種類の番組が配信されており、それぞれが複数回のエピソードで構成されている。たとえば、20分のワークアウトの番組は全10回。限られた時間内で、体幹トレーニングからヨガまでさまざまなエクササイズが含まれる。一方、よりハードな30分トレーニングは全3回。有酸素運動と体幹トレーニングをミックスしたような内容だ。さらには、全26回の10分トレーニングや全7回の2週間プログラムもあり、それぞれのライフスタイルやトレーニングの目的、体力レベルなどに合ったプログラムを選ぶことができる。

 NTCは、ナイキが提供する既存のエクササイズプログラムで、iOSやアンドロイドのアプリを通じて無料で利用できる。新型コロナウイルスのパンデミックによって自宅で過ごす時間が増えたことなどを受け、2020年1月から11月のダウンロード数が前年同期比で45.3% 増えた。ナイキは新たな連携に関して「すべてのアスリートに対してスポーツを普及させるために、ネットフリックス会員にNTCコンテンツを提供する」と説明。もともと無料で配信されているNTCだが、全世界2億人以上のさまざまなネットフリックス会員に対してNTCの認知を広げ、ナイキ・ブランドの存在感をアピールするといった意図がうかがえる。

 ネットフリックス会員がNTCを利用するためには特別な登録などは不要で、既存会員は「Nike」と検索するだけで、シームレスに番組にアクセスすることができる。また、プログラムには基本的に特別な設備や道具なしで、自宅などで手軽に参加できる。

 これまでのネットフリックスといえば、ネットフリックスを見てくつろぐ、一緒に過ごすなどといったような意味で使われる英語のスラングである「ネットフリックス・アンド・チル(Netflix and chill)」や、ネットフリックスなどで配信されるシリーズものの番組を一気に見るという意味で使われる「ビンジウォッチング(binge watching)」という言葉などに象徴されるように、罪悪感を感じつつもダラダラ過ごすような娯楽としての位置づけを確立してきた。今回のNTCとの連携には、新たなニーズを開拓することで既存会員を留まらせ、新規会員を引きつけようというネットフリックスの狙いがうかがえる。

Text by MAKI NAKATA