ケニアのフードテック「Kune」はなぜ受け入れられなかったのか

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 ケニアでロンチしたフード・サービスのスタートアップの「クネ(Kune)」は、昨年1億ドルのプレシード資金調達に成功した。しかし先月、クネのサービス終了が発表された。同社は資金調達当初、「ありもしない課題」に対してのソリューションだとの批判も浴びていた。クネの興亡と、その背景とは。

◆クネが目指したもの
 クネは、フランス人起業家ロビン・リーヒト(Robin Reecht)が立ち上げたスタートアップ。リーヒトは米コロンビア大学で工学を学び、ベトナムでも2つの事業を立ち上げている。また、AIを活用して投資家と資金調達を目指す企業のマッチング・サービスを展開するフランス企業アヨミ(Ayomi)での投資関連の仕事をしていたという経歴も持っているようだ。テッククランチによれば、リーヒトは2020年の11月にフランスから初めてケニアを訪問し、手頃な価格で、すぐに食べられる食事にアクセスするのが難しいと感じたようだ。インタビューで「ケニアに到着して3日後、どこで安くておいしい食事ができるかと皆に聞いてまわったが、みんなにそれは無理と言われた」と語る。選択肢は、少なくとも10ドルはするデリバリーの食事か、あまりクオリティが期待できない屋台の食事に限られているというのがその説明だ。

 現地に住む人とのそうした会話を経て、リーヒトはケニアに到着したその翌月の12月にクネを立ち上げた。クネのサービスは、作りたてのおいしい食事を手頃な価格で提供・配送するというもの。1週間程度でパイロット版を開発し、平均価格約4ドル(400〜500円程度)の食事の販売・配送を開始した。ロンチ当初のオーダは1日50件ほど。その後、5万ドルを調達し、さらなる事業拡大に向けてチームに投資。1日5000件のオーダーを獲得するまでに成長した。そして昨年6月、東アフリカのエコシステムでは非常に高額である、プレシードでの1億ドルの資金調達を実施し、話題を読んだ。クネのビジネスモデルは、工場で製造した食事を消費者もしくは小売店などに展開するもので、工場・配送を含むサプライチェーン全体を管理する、アセットヘビーなモデルだ。加えて、人材採用も積極的に行っていたようだ。資金繰りが困難になったことを理由に、クネは今年6月、事業閉鎖に至った

Text by MAKI NAKATA