IPO果たした米バズフィード、調査報道から撤退 デジタルメディアの行方は

バズフィードCEOのジョナ・ペレッティ(2019年3月)|nrkbeta / flickr

◆上場とポートフォリオの拡大
 バズフィード社は2006年の創業以来、段階的に資金調達を実施。NBCユニバーサルが率いた、もっとも直近のシリーズGラウンドでは2億ドルを調達し、評価額は17億ドルとなった。NBCユニバーサルは、シリーズFの資金調達ラウンドでも2億ドルを投資している。CEOのペレッティは2015年ごろからIPOを視野に入れていたようだが、2021年にようやくIPOを実現。12月6日、ナスダック市場にてBZFDの銘柄で取引を開始した。バズフィードは特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Company:SPAC)である890フィフス・アベニュー・パートナーズ(890 5th Avenue Partners)と合併して上場。

 バズフィードのSPACはハースト(Hearst)とベライゾン(Verizon)からコンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)を買収し、新たなデジタル・メディアブランドを傘下に引き入れた。2020年にハフポストを買収している同社は、デジタルメディアのポートフォリオを着実に拡大させている。投資家向けの報告書によると、バズフィード社は、エンターテインメント&カルチャー、フード、ニュースで5つのデジタルメディアブランドを持ち、さらにビューティー、トラベル、ヘルス、ホームの分野も合わせると合計9つのブランドを保有している。

◆投資家の期待とリストラ
 バズフィードの株価は上場直後大幅に下落し、その後も下降を続けている。6月17日時点、同社の株の終値は1.69ドル。上場時点の10ドル前後の価格帯から下落を続けている。また、上場直前に投資家からの資金引き揚げが相次いでいた。5月に発表された3月末日締めの第1四半期の業績報告によると、ハフポストとコンプレックス・ネットワークスの買収により、売上は昨年同期比で26%増加。一方、純損失は昨年同期の1130億ドルから4460億ドルへと拡大した。今後の業績の改善と黒字化へのプレッシャーが高まっている状況だ。

 黒字化に向けては、採算の合わない事業に白羽の矢が向けられる。その一つがニュース・コンテンツ事業。報道によると、バズフィード・ニュースは約100名のスタッフを抱え、毎年約1000万ドルの損失を計上している。CEOペレッティは4年前のインタビューで、健全なデモクラシーとより良い世界を実現するためには、(ペイウォールではなく)人々が無料でニュース報道にアクセスできるべきであるとしつつ、一般的にニュース報道はお金がかかると述べている

 実際、バズフィード・ニュースのリソースはリストラクチャリングの対象となっているようだ。バズフィード・ニュースの調査報道部門、政治、科学、不平等のトピックを扱う報道デスクは削られ、ニュース速報、カルチャー、セレブリティといったコンテンツが存続する。チーム縮小と同時にトップの編集者が次々退社している。高品質のニュース報道を行うチームを率いてきたマーク・シューフス(Mark Schoofs)編集長、トム・ナマコ(Tom Namako)副編集長、そしてエグゼクティブ・エディターのアリエル・カミナー(Ariel Kaminer)が退社。ちなみにバズフィードはハフポスト買収直後も、数10名のスタッフを解雇している。

 デジタルメディアにおける報道ジャーナリズムの未来はどうなるのだろうか。バズフィードは利益をもたらすビジネスモデルの構築の難しさを改めて示す事例となった。同時に、初めて上場を果たしたデジタルメディア企業の今後の事業展開や買収案件には、引き続き注目が集まることだろう。

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Text by MAKI NAKATA