米経済メディア「クオーツ」が無料化 メディアの事業モデル模索続く

II.studio / Shutterstock.com

 オンラインのビジネスメディア、クオーツ(Quartz)が、サブスクリプション・フィーを廃止し、一部を除いてコンテンツを無料化することを発表した。その文脈と背景とは。

◆クオーツの新たな方針
 4月14日、クオーツの共同創業者兼CEOであるザッカリー・スワード(Zachary Seward)は、QZ.comの購読料(ペイウォール)を外し、ほぼすべてのクオーツのコンテンツを無料化すると発表した。この判断は、よりよいビジネスの構築というクオーツのミッションにより忠実になるためであるとスワードは説明する。よりよいビジネスの構築は、ビジネスリーダーがさまざまな課題解決のためのよりよい経営判断を下すことを手助けすることであり、それはクオーツというメディアにとってはそのコンテンツをよりアクセシブルなものにすることを意味する。

 一方で、2万5000人の既存の購読会員に対しては、引き続き、クオーツの会員のステータスを維持することを期待しているようだ。スワードは、クオーツはある種のグローバル・ムーブメントであると説明している。それは、資本主義をより公平なものにすることであり、ビジネスをよりサステイナブルでインクルーシブなものにすることだ。スワードは、既存会員は必ずしもコンテンツへのアクセスという特権ではなく、グローバル・ムーブメントの一員として、クオーツを支援している読者であると認識しているようだ。

 またいくつかのコンテンツは、購読会員限定のものとして存続する。たとえば、キュレーションした日本語版の記事を中心にニュースを配信するクオーツ・ジャパンのニュースレターは、有料のプロダクトとして存続する。さらに、アフリカのビジネスリーダー、ディアスポラや投資家などアフリカ外にて大陸の最新動向に関心を抱いている人々に向けて配信される、アフリカ各国の最新ビジネス情報やイノベーション・起業家動向に関するニュースレターも引き続き有料版のコンテンツとなる。

 クオーツは2018年に日本のメディア会社ユーザベースが買収。しかし、その業績は悪く損失が続いたため、2年半後、同社はクオーツをその創業者に売り戻した。クオーツのペイウォールは2019年に導入されたものだ。ジャーナリズム研究に特化したハーバード大学ニーマン財団の研究所であるニーマン・ラボの記事では、ジャーナリストのスティーブン・パールバーグの解説を紹介し、クオーツは、ニッチにもマスにもなりきれない中間位置にあり、ビジネスモデル構築の難しさを説明している。

Text by MAKI NAKATA