ディズニーの自治権はく奪 「ゲイと言うな法」反対でフロリダ州と対立

John Raoux / AP Photo

 デサンティス氏や同州議会の共和党議員がディズニーに報復した形だが、この自治権はく奪は諸刃の剣である。前出のCNN記事によると、ディズニーは「リーディー・クリーク改善法」により同社に与えられた自治権により、税制で優遇されるだけでなく、ディズニーワールドが位置する同州オーランド付近で同社が所有する敷地内において、警察や消火活動を含む同社自体の公益事業の実施を許可されていた。自治権がはく奪されれば、これまでディズニーが負担していた公益事業は、その地域の郡政府が実施することになり、その予算を割かなければならない。また特別区の負債は10億ドル以上あり、同地域に居住する住民への税負担となる。記事によると、同州民主党議員は「一世帯で年間2200ドルから2800ドル」としている。これは労働者層や中流層にとって相当の負担である。

◆ディズニーワールド移転に他州が誘致開始
 フロリダ州政府がこのように敵対的な措置をしたことにより、ディズニー側では色々な思惑があるはずだ。同社はこれまでにディズニーワールドに多大な投資をしており、すでに施設が整っていることから、現時点では移転などの話題は出ていないようだ。

 しかしニューズウィークによると、雇用や観光収入によりディズニーが生む経済的利益に目をつけ、すでに他州からの誘致が始まっているという。コロラド州のジャレッド・ポリス知事はツイッターで、「コロラド州は民間企業の邪魔をしない。山のディズニーランドの準備ができている」「ミッキーとミニーに完全な保護を与える」と熱烈な誘致を行っている。またテキサス州フォートベンド郡の判事も、フロリダ州知事を「過激派」と呼び、同郡に「新しいウォルト・ディズニー・ワールドを開いて欲しい」と呼びかけており、今後も誘致活動は増えていくだろう。

 大方では今後フロリダ州政府側が何らかの形で折れるのではないか、という見方が強いが、保守強硬派で2024年の大統領選出馬を狙っていると噂されるデサンティス知事が、そう簡単に意見を曲げるとは思えない。一方、同州メディア『タラハッシー・デモクラット』は、同州中部に住む住民がディズニー自治権はく奪問題でデサンティス氏を訴えたと報道しており、この一連の争いは当分の間続きそうである。

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Text by 川島 実佳