小売業界も虹色に……LGBTQの存在がメジャーになった米国 プライド月間

AP Photo / Mary Altaffer

 今年のLGBTQプライド月間は、大手小売店各社が多様なアパレル関連商品を取り揃えて「ストーンウォールの反乱」50周年を盛り上げている。

 ニューヨークシティにあるメイシーズ本店では、ショーウィンドウがプライドにちなんだレインボーカラーで彩られている。有名なクリスマスのホリデーディスプレイが飾られる、あの場所だ。タイムズスクエアの電光掲示板は、近隣にあるセフォラやカバーガール、リーバイスのプライド関連ファッションアイテムやコスメの広告であふれている。

 しかし、今年のプライド商戦で大きな転換を迎えているのは、最先端の地ニューヨークではない。

                                                                                                                 

 LGBTQ問題に取り組む団体で25年間活動を続けてきたスティーブン・マシアス氏は、「沿岸の大都市にある小売店がLGBTQを祝福することはありましたが、それが小さな町にまで広がりを見せるなんて、今年が初めてです」と話す。同氏は、ロサンゼルスを拠点とするグローバル広告会社MWWPRでダイバーシティおよびインクルージョン(多様性および非排他性)部門のトップを務めている。

 マシアス氏が幼年期を過ごしたカリフォルニア州のフレズノは、リベラルなロサンゼルスやサンフランシスコと比べて差別意識などが根強い農村地域だ。そんな故郷である光景を見た彼は、驚愕した。

「子供の頃、女みたいだといじめられたフレズノのショッピングモールで、多くの店がレインボーフラッグやプライド関連のディスプレイ、そして同性婚の家族向けのアイテムを並べているのを目にしました」とマシアス氏。「中部アメリカの地で我々が祝福されていることは、衝撃でした。店同士が互いに競い合っている様子も、まったく問題ではありませんでした」と語る。

 オクラホマシティの地元スポーツショップ「レッド・コヨーテ・ランニング・アンド・フィットネス」は、ショーウィンドウにレインボー柄のプライドフラッグに靴を履かせてディスプレイした。同社は6月22日に初開催されたマラソン大会「ラブ・ラン」のスポンサーも務めている。参加者に贈られるメダルは、レインボーカラーだ。

 一連の販売キャンペーンは、その多くが「ストーンウォールの反乱」50周年を記念するものだ。1969年6月28日の早朝、ニューヨークシティのグリニッジヴィレッジにあるゲイ・バーの「ストーンウォール・イン」に警察の手入れが入った。これに抵抗する人々が立ち上がり、数日間に及ぶ抗議行動へと発展した。

 それから数十年という長い道のりを経て、近年はLGBTQをテーマにした商品を取り扱うアメリカの企業も増えた。今ではそれが大衆市場から反発を受ける心配もない。2019年、小売業界におけるLGBTQの存在が初めて主流派に躍り出たことは間違いない。

「数十年前なら、LGBTQコミュニティに手を差し伸べることは、他の消費者を失うことを意味しており、それが小売業者の間では常識でした。しかし、小売業界の景色も変わりました。LGBTQの消費者を支援したら反発を招く、という不安が現実になることはほとんどありませんでした」と、マシアス氏は言う。

 プライド関連商品を「企業の売名行為」だとして、歓迎しない人もいる。

 ニューヨークで長年にわたってLGBTQ活動を続けてきたビル・ドブス氏は、「大手企業はLGBTの葛藤を商機として、企業のイメージアップに利用している」と語る。

「ゲイの権利を求める現代のムーブメントは、ストーンウォールから始まりました。LGBTの人々にとっては今も命を懸けた闘いです。レインボーカラーのアクセサリーや洋服を売るとか、そういうことではありません。それは、単なる娯楽です」。

 プライドキャンペーンに参加するブランドの中には、同性愛者が違法とされる、あるいは迫害が横行する国でアパレル製品を生産し、批判の的となっている企業もある。

 ニューヨークのLGBTQイベントが大企業の後援を受けることに反対するリクレイム・プライド・コーリションでボランティア活動に携わる、テリー・ロースライン氏は「こういった企業の中にも善意の人はいるかもしれません。でも、これはただの販売戦略です」と話す。

「アメリカで売られる商品の多くが、海外の悲惨な環境で生産されています。これもまた、プライド関連商品の販売にまつわる問題の一つにすぎません。マーケティング活動が宿命的に持つ不道徳な一面なのです。私たちが欲しいのは、レインボー資本主義ではありません。同性愛者の解放を望んでいるのです」と、ロースライン氏は話す。

 プライドブランドのアパレルラインを持つ企業には、LGBTQ関連団体に寄付金や売上金の一部を提供するものも多い。

 H&Mは、「ラブ・フォー・オール」コレクションの売上の10%を、国連による「LGBTQの非犯罪化キャンペーン」に寄付している。また、シューズメーカーのUGGフットウェアは今月、「イェイ・プライド」サンダルの売上の25%を、レディー・ガガが立ち上げた「ボーン・ディスウェイ基金」に寄付している。

「ラブ・マイ・ダッド」や「ラブ・マイ・マム」といった幼児向けTシャツなど、家族をテーマにしたプライド関連商品を販売しているディスカウント百貨店のターゲットは、主にLGBTQの学生が安心して通える学校を提供する団体GLSENに10万ドル(約1,080万円)を寄付している。ストーンウォールをテーマにしたTシャツを販売するアメリカンアパレルは、同商品の売上を「低所得のトランスジェンダー有色人種女性に化粧品を提供する」というイニシアチブに活用する。

 今年はメイシーズがスポンサーとなるプライドパレードがアメリカ各地で開催され、同社の従業員も行進に参加した。このイベントは、青少年の自殺防止と危機管理を目的とする「ザ・トレバー・プロジェクト」への店頭寄付を買い物客に募るためのものだ。また、同社ではプライドブランドの一環であるINCシリーズのシャツや靴下1点につき、それぞれ4ドル(約431円)と2ドル(約215円)をトレバープロジェクトに寄付している。

 メイシーズのシニアバイスプレジデントを務めるアビゲイル・ジェームズ氏は「これは私たちにとって本質的な価値であり、変化と進化を遂げてきたこの世界にいる自分は一体誰なのかを問うことでもあるのです」と言う。

By VERENA DOBNIK Associated Press
Translated by isshi via Conyac

Text by AP