ディズニーの自治権はく奪 「ゲイと言うな法」反対でフロリダ州と対立

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 アメリカ南部フロリダ州で3月8日、教育における親の権利法(The Parental Rights in Education bill)、いわゆる「Don’t Say Gay(ゲイと言ってはいけない)」法案が同州上院で可決され、同州のロン・デサンティス知事の署名により法律化された。この法律の主旨は小学校のクラス内で性的指向やジェンダー・アイデンティティ(性自認)についてのディスカッションを禁じるもので、「Don’t Say Gay」といえども、禁止されるのはもちろん「ゲイ」という言葉だけでなく、「ヘテロセクシュアル(異性愛)」や「ホモセクシュアル(同性愛)」「レズビアン」「トランスジェンダー」などの言葉も含まれている。

 しかしとくに宗教色が強い南部の保守派人口にとって、異性愛が当然とされる世の中では、通常は性的指向に関するディスカッションは公に行われないことが多いため、この法律はもちろん、最近アメリカでオープンに語られることが多くなった「LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クイア)」についての人口をターゲットにしたものであることは間違いない。そういう理由で、この法律はフロリダ州のみならず、全米のLGBTQ人口やリベラル派人口、さまざまな企業から猛反発を受けている。そのうちの一社が同州最大のレクリエーション施設で財源、かつ民間の雇用主でもあるディズニーだ。

◆新法反対の報復としてディズニー自治権はく奪
 NBCの経済系ニュース局CNBCによると、同社は3月に「フロリダ州のHB1557、別名「Don’t Say Gay」法は承認されるべきではなく、法律として署名されるべきではなかった」「我々の企業としてのゴールは、この法案を議会により廃止させること、裁判所により却下されることで、それを達成するために活動する全国と(フロリダ)州の組織をサポートすることを約束する」と、同法に反対する強硬的姿勢を示す声明を公表した。

 しかしCNNによると、ディズニーの声明に反発したデサンティス知事と共和党多数の議会は4月後半に、その報復として同州内でウォルト・ディズニー・ワールドが位置する地域において、同社が1967年より過去55年間におよび享受してきた自治権や税制の優遇措置をはく奪する法律を承認。この法は2023年6月1日に発効する運びとなった。

Text by 川島 実佳