トヨタEV強化のサプライズ、海外メディアはどう見た?
◆ハイブリッド成功があだに?
これまでトヨタの豊田章男社長は、他社とは対照的にEVに突っ走ることに慎重な発言を繰り返してきた。本当に消費者がバッテリー駆動式の車を欲しているのかと問い、EVのパワーが化石燃料から発電されるなら、自社が得意なハイブリッド車に比べ、それほど環境に優しくないのかもしれないという意見も示していた。さらに、EVシフトを急げば、従来のガソリン車サプライヤーのネットワークが破壊され、いまの自動車産業のビジネスモデルが崩壊する可能性もあるとも述べていた。(WSJ)
トヨタのEV化への消極的な姿勢の原因の一つは、長年にわたってハイブリッド技術に注力したことだと、フォーブス誌に寄稿した元米環境保護庁ディレクターのマーゴ・オジェ氏は述べる。かつてはプリウスでグリーン・リーダーとなったが、過去にしがみつくことでバッテリーEVの開発を犠牲にし、大きなチャンスを逃したと指摘している。自動車業界が電動化に向かっても、自社の燃料電池搭載車を提唱し続け、アメリカではEVの普及を妨げるようなロビー活動を展開してきたと厳しい意見だ。もっとも再びクリーンカーのリーダーとしてのブランド力を取り戻すには十分な立場にあるとし、トヨタのEV戦略に期待している。
◆投資家に配慮か? それでもEV以外にこだわる理由
トヨタの方針転換の理由だが、FTは、テスラの躍進を尻目にトヨタがEVに消極的なことについて投資家が懸念したことが上げられるとする。EVを売り込むフォードやゼネラルモーターズの評価が、トヨタに追いついてきたというデータもあり、これが章男社長に行動を起こさせたのではないかとロイターは述べている。
もっともトヨタはいますぐのEVシフトを目指しているわけではない。地域により状況やニーズはそれぞれ異なるという考えで、脱炭素に向けて多様な選択肢を提供したいとしている。たとえばアメリカでは、環境に優しい車を好む人が多くインフラの整った東海岸や西海岸ではEVは売れるが、中西部では使用環境が違いすぐにバッテリーEVへのシフトは困難だと見ている(WSJ)。
これに対し、トヨタは2040年までにガソリン車の販売を停止するCOP26 の公約を支持しない企業の一つだとロイターは指摘。ハイブリッドや水素技術とのミックスでは温室効果ガス削減には十分ではないと主張する。そして「ハイブリッド重視の戦略をスクラップ場に送れば、スムーズに走行できるようになる」と皮肉な暗喩で批判している。
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