海外駐在員の安全をどう守るか 東南アジアのパンデミックから考える
◆重要な対応・決断が遅い日本企業
おそらく、東南アジアでの新型コロナ猛威によって、早く帰国したいというのが駐在員の本音だろう。しかし、それを決定するのは企業のトップであり、社員が勝手に帰国することは難しいのが実態だ。企業内部の情報に精通しているわけではないが、この件をめぐって本社と駐在事務所の間でかなり意見の相違があるのではないだろうか。
上述のホーチミン日本商工会議所の調査結果によると、「帰国・検討中」ではない企業が依然として3割以上ある。これはいかにして企業が海外駐在員の安全を守るかという問題である。それでも、2021年に入ってのミャンマークーデター、そして今回の東南アジアでの感染拡大のケースでもわかるように、多くの企業にとって駐在員の帰国という決断はそう簡単なことではなく、最後の手段になる場合が少なくない。暴動や内戦、テロなどの治安・政治リスクであればそれがある程度悪化し、新型コロナウイルスであればある程度感染が拡大しないと帰国という決定にはならない。つまり、危機がはっきりと見えてから対処を本格的に開始する企業が多い。
◆海外駐在員の安全をどう守るか
一方で、今年初めのミャンマークーデターのように、潜在的だったリスクが爆発して、一気に駐在員の安全を脅かしかねない事態となる場合も多い。リスクの深刻さにもよるが、何か危険な動きがあった場合には、帯同家族だけでも早期に帰国させるという決定がもっと各企業で広がっていくべきだろう。
駐在員を取り巻くリスクも多岐にわたり、予測が難しいものが多い。しかし、そのリスクを回避する可能性を上げることは可能であり、たとえば取り巻くリスク全般について日頃から情報収集・分析する習慣を身につけ、何か怪しい動きがみられる場合には、自宅待機、テレワーク、または帰国などを早期に決断できる体制を各企業はさらに強化するべきだろう。
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