離職者急増、アメリカ人がいま仕事を辞める理由

Nam Y. Huh / AP Photo

◆4月だけでアメリカ人400万人が離職
 CBSニュースによると、米労働統計局は2021年4月の離職者が400万人を超えたと公表した。これは、新型コロナ以前の24%増の数字だという。ほかにもっといい職場を見つけて転職した人、リモートワークが続けられる職を見つけた人、自分のビジネスを始めた人など、離職の理由はさまざまだ。

 かくいう筆者も、パンデミック以前に働いていた会社から、非常事態後に行われた大量解雇の憂き目に遭った一人である。しかし、離職後すぐに失業保険をもらえたことが幸いし、当面はお金の心配をすることなく、じっくりと次の出方を考えて準備することが可能だった。しかし、会社の危機とはいえ突然解雇されたことで、フルタイムで企業に勤務することは決して安定ではないことに気づかされた。誰も予想しなかったパンデミックという状況とはいえ、いざとなると雇用者は薄情なものである。だからこそ、手に職をつけて経済的に自立することが大事なのだと悟った。

 ワシントンポスト(電子版)では、新型コロナ禍で離職したアメリカ人6人のストーリーを紹介しているが、その全員が自粛中に家に閉じ込められたような状態のなかで、じっくりと自分の仕事や、人生をどう生きたいかについて考える機会があり、思い切って自営の道に進んだと答えている。

 新型コロナウイルスという特殊な状況下で、いままで働き詰めだった人々がそんなライフスタイルをストップせざるを得なくなった。自宅で長い時間を過ごし、自分の時間や家族との時間を持つことで、人生を見直す機会ができて、これまで働いていた仕事にはもう戻りたくないと決心し思い切って離職した人が多いようだ。

 アメリカでは新型コロナ感染で60万人以上が死亡した。ワクチンが出回って感染者が減少し、生活が元に戻ってきているなかで、せっかく無事に生き残れたのだから、これからの人生を後悔することなく好きなように生きたい、と思う人が増えるのは当然の成り行きかもしれない。

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Text by 川島 実佳