日本のアニメーターの低賃金に海外衝撃 「夢の職業」の実態を米紙が特集
◆賃上げ阻む業界構造 大ヒットでも利益変わらず
アニメブームなのだから、需要増に伴い賃金は上がっていくはずだが、主要イラストレーターや一流クラスの人材を除けば、日本はそうなっていないとNYTは述べる。実際に、日本アニメーター・演出協会の2019年の調査では、20~24歳のアニメーターの平均年収は154万6000円で、同世代の全国平均の6割ほどしかない。20~34歳の若年層すべてで、全国平均を下回っているのが実情だ。
薄給の若いアニメーターが増える原因の一つは業界の構造だとNYTはいう。日本では玩具メーカー、コミック出版社、その他の資金調達のための企業が連合を組む「製作委員会」方式がアニメ製作に使われることが多い。この場合、通常アニメスタジオには所定の報酬しか払われず、商標、著作権などのロイヤルティーは製作委員会が保有する。失敗のリスクが回避できるというメリットがスタジオ側にはあるが、作品が大当たりしても恩恵に預かれないというデメリットが生じている。
スタジオ側が料金引き上げや利益共有を製作委員会と交渉すべきなのに、相変わらずフリーランスとしてアニメーターを雇用することでコストを下げ、困窮させているとNYTは断じる。それでもアニメを愛し、いつかこの世界で成功することを夢見る若者が大量におり、それが薄給が続く理由だと、長く日本のアニメ業界で働いてきた外国人女性は同紙に話している。
実際にYouTubeチャンネル「Asian Boss」の動画では、長時間労働で月収数万円、月1万円の食費で暮らすアニメーターが「好きだから辛いと思わない」と話している。もっとも「やりがい搾取」ともいえる現状では、次に続く世代の夢がなくなるため、能力にあった賃金は支払うべきだとしている。ビデオのコメント欄には、実態に驚き、アニメファンは必見という英語コメントが並んでいる。
◆クールジャパンが恥ずかしい 援助は外資から
こうした低賃金の新人アニメーターを守るため活動する、アニメーター支援機構の菅原潤氏は、待遇改善に関して国や自治体が効果的な戦略を持っていないとし、これではクールジャパンは意味がなく、見当違いな政策だとも話している(NYT)。
このままでは才能ある若手が業界を離れてしまうという懸念から、大企業から労働慣行を変える動きも見られる。Netflixは、次世代のアニメーター育成のためのプログラムへの貢献を発表。特待生制度を通し、受講生10名前後に月額15万円の生活費と授業料(60万円相当)を支給するとしており、アニメ界の変革が期待される。
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