中国、在宅勤務の実験場に 休暇明けに混乱も 新型肺炎

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◆失敗も数々 壮大な実験スタート
 休み明けに突然在宅勤務を言い渡された人々の間には、戸惑いも広がったというが、なんとか対処している人が多いようだ。Sixth Toneによれば、ネット上では初のリモートワーク用に作った自前のオフィス画像が披露されている。戸棚、洗濯機、ワークアウト用のベンチを机に見立てた簡易オフィスもあれば、ベッドの中が仕事場という人もいた。また、ペットに仕事を邪魔されるほのぼの映像なども投稿されているということだ。

 メディアも在宅勤務に関するアドバイスをしている。効率のいい働き方を教えるものもあれば、パジャマから着替える、布団の中から同僚に意図せぬ期待をさせる発信をしない、軽く化粧はしておく、などのビデオ会議用のエチケットなども提供されている。

 慣れないリモートワークで失敗もあるようだ。インターネット企業の捜狗の社員が、河北省でマグニチュード12.0の大地震が来るという警報メッセージを、間違ってアプリのユーザーに送ってしまった。同社はその後謝罪して地震警報機能を削除し、在宅社員のミスだったと説明したという(Sixth Tone)。

 在宅で生産性が落ちるかどうかが企業の心配するところだが、スタンフォード大学の研究では、2015年に中国のコールセンターの従業員に9ヶ月の在宅勤務をさせたところ、パフォーマンスが13%向上したと報告されている。コロナウイルスのおかげで、図らずも中国がリモートワークにおける実験場と化しており、世界最大の在宅勤務実験になりそうだとブルームバーグは述べている。

◆経済、市民生活に影響 続く自主隔離
 もっとも、すべての企業が在宅勤務に切り替えられるわけではなく、工場、流通、リテールなどに代替プランはない。経済の53%をしめるサービス業にとっても厳しい状況だ。さらにネットや電話でビジネスができるといっても、いまの状態では仕事自体があまりないということだ(ブルームバーグ)。

 ビジネスが閉鎖され移動も自由にできないいま、コミュニケーションツール以外で人気なのは映画のストリーミングやゲームなどで、オンラインエンターテイメントは盛況だという。Sixth Toneによれば、学校も閉鎖されているところが多いが、一部ではオンライン授業に切り替える動きも出ている。ウイルスの封じ込めにどれだけ時間がかかるのかはわからず、中国国民の自宅にこもる生活に終わりは見えない。

Text by 山川 真智子