アメックス、驚きの方針転換の理由は? 身を切り加盟店を積極獲得
アメリカン・エキスプレス(アメックス)は、自社のクレジットカードをプレミアムと位置づけ高所得層をターゲットにしてきた。1958年以来、同社のカードは、高所得で安全な信用情報を備えた人だけが持てるといったステータスシンボルともなっている。カード所有者一人あたりの利用額が大きいので、加盟店が少なくても利益が出るビジネスのはずだが、近年猛烈な勢いで加盟店獲得に動いており、業界を驚かせている。
◆小売りはアメックスが嫌い? 原因は手数料
カード業務全般のアウトソーシング大手、TSYSがアメリカで2018年に行った調査によれば、消費者が好む支払い方法は、現金14%、デビットカード54%、クレジットカード26%だった。米連邦準備制度の2019年の調査でも、実際の支払いの23%がクレジットカードによるものだった。いまや4人に1人がクレジットカードで支払いをしているということで、商売のサイズにかかわらず、加盟店側にすれば手数料はビジネス上のコストとなっている(投資家向け情報サイト『モトリー・フール』)。
ニールセンによれば、2016年のクレジットカードのシェアのほぼ半分はビザが占めていた。マスターカードが32.3%でそれに続き、アメックスは11.8%ほどだ。アメックスは加盟店手数料が高く、取り扱わない小売店や施設が多かったため、ビザやマスターカードよりも加盟店は130万件少なくなっている(同上)。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、そもそもアメックスは高所得者や富裕層を取り込むことで、他社と距離を置いてきたとする。アメックスのカード所有者は大きな買い物をするという前提のもと、加盟店は高い手数料に応じてきた。また、アメックス自体も、加盟店の少なさを、高い手数料で補ってきた歴史がある。