岐路に立つ老舗ティファニー 顧客の世代交代、米中対立、香港デモ

Cineberg / Shutterstock.com

◆中国の洗礼 広告撤回は素早い忖度か?
 中国を意識してか、ティファニーは2019年春のキャンペーンの広告の一つに中国人モデルを起用したが、この写真が中国国内のSNSで批判を受け、ティファニーを慌てさせる事件が起こった。

 写真のなかで、モデルは右目を手で隠していた。8月の香港の抗議デモでの警察とデモ参加者との衝突で、女性が目に重症を負ったとされる事件があり、右目を隠すジェスチャーは反政府派によって警察への怒りを表すために使われた。中国ニュースのサイト『Inkstone』によれば、中国のSNSでは「意図を説明しろ」「香港独立を支持するのか」といったナショナリストからのコメントが寄せられ、モデル宛にも怒りのコメントが届いたという。

 問題の写真が撮られたのは今年の5月だ。キャンペーンがスタートしたのも反政府運動が高まる前だったが、ティファニーはすぐさまソーシャルメディアから画像を削除し、政治的含みを感じさせるため写真の使用をやめると発表した。最近、NBAのヒューストン・ロケッツのゼネラルマネージャーが香港デモを支持する発言をしたということで、NBAが中国をあげての反発に直面している。危機管理としてはティファニーの取った行動は正しいのかもしれないが、幕引きを急ぐ老舗の決断にがっかりしたファンは多かったことだろう。

Text by 山川 真智子