米国で好調のスバル 累計1000万台、93ヶ月連続成長 実用重視で顧客の心掴む

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◆成長で累計1000万台に到達
 こうして着実にアメリカでの事業を拡大したスバルは、現地での販売台数が累計1000万台に到達した。折り返し地点となる500万台を販売するまでに、同社は実に41年を要している。しかし販売ペースは急速に向上し、後半の500万台の販売にはわずか10年しかかからなかった。

 近年もその業績は確実に向上している。アメリカにおける同社の月間販売台数が93ヶ月連続で前年同月比プラスを記録した。今年9月度の販売数で減少に転じたため記録はストップしたものの、きわめて順調な成長ぶりを示す数字だ。また、9月度の販売数減少は製造・流通の問題であり、依然として強い需要を維持しているようだ。自動車情報サイトの『トルク・ニュース』は、2019年型の製造を同社が打ち切り、2020年型のフォレスター、アウトバック、レガシー、アセントの製造に工場のリソースを振り向け始めたことが原因だと報じている。依然として強い需要はあるものの、モデルチェンジに伴う流通量の減少により連続記録が途絶えることとなった。

◆アメリカ市場以外では懸念も
 一方、世界規模で同社のビジネスを見てみると、懸念材料がないわけではない。2019年3月期の同社の決算では、アメリカ市場以外での販売不調が響き、営業利益は48.5%の減少となった。とくにヨーロッパと日本での状況は深刻で、それぞれ売上台数が16.1%、17.2%の落ち込みとなっている。ジャロプニク誌は、トランプ政権の下ではアメリカ側の自動車関税発動が予断を許さないこと、また、パワーステアリングの品質問題で製造数が6%ほど低下したことなどを不安要因としてあげている。加えて皮肉なことに、スバル車はリセールバリューが高く、新車でなく中古車が好んで買われることも新車販売数を抑制する思わぬ足枷になっている。

 ただし、日本ではトヨタがスバルの持ち株比率を約17%から20%まで引き上げるなど、好材料も出てきている。トヨタはEV車の開発でスバルと協力関係にある。EVの浸透でボクサーエンジンの優位性が失われつつあったが、先進分野でより強固な協力関係を確保したことは、同社の将来に一定のプラス効果をもたらすだろう。

Text by 青葉やまと