ホンダ英工場閉鎖 原因はブレグジットではなく、業界の「先例のない変化」

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◆原因はブレグジットではなく、欧州セールスの不振
 もっとも、いくつかのメディアは、ホンダの決断にはブレグジット以外の理由があるとする。ブルームバーグによれば、実はホンダの欧州でのセールスは低迷しており、利益も日本や北米に比べればわずかだという。たとえ「合意なき離脱」となっても、純利益が1%減る程度とのことだ。ユーロニュースは、シビックの欧州でのセールスは年々減少しており、この10年で半分以下になったと伝えている。

 スウィンドンでは、シビックのほかにディーゼルエンジンも輸出用に作っているが、ドイツ車が排ガス規制逃れで行なった「ディーゼルゲート」事件の影響などで、こちらの未来にも期待できない。フィナンシャル・タイムズ紙の東京支局長、ロビン・ハーディング氏によれば、数年にわたり、ホンダは儲からないイギリス工場の閉鎖を避ける努力を続けてきたという。アメリカへの輸出もその一つだが、トランプ政権下で、欧州からの輸入車の関税が大幅に上がる可能性もあり、これ以上の存続は厳しかったようだ(ユーロニュース)。

◆未来に備えるホンダ 企業としては適切な判断
 ホンダ自体もブレグジットとの関係を否定しており、電気自動車に注力するための決断だとしている。このタイミングで工場閉鎖を発表したのは、2021年以降の新型シビックの生産についての決断をする必要があったためで、今後は高い需要が望める中国、日本、アメリカに生産を移行するとしている(ユーロニュース)。ブルームバーグによれば、ホンダは2030年までには販売の3分の2以上を電気自動車から上げたいとしている。開発のための費用や製造コストの上昇を考慮すれば、販売が減り、この先の展望もない欧州に留まる理由はないとしている。

 さらに、2月に発効した日欧EPAにより、2027年までには欧州向け日本車の関税が撤廃される。そうなれば、日本の自動車会社が欧州に生産拠点を持つ意味はなくなってしまうと、ガーディアン紙は説明している。

 イギリス工場閉鎖にあたり、ホンダは、業界における「先例のない変化」でグローバルな再構築が必要となったとも説明している。ブルームバーグは、貿易戦争に関連する関税や規制から、中国の景気減速やテクノロジーの混乱まで、自動車メーカーは世界のありとあらゆる懸念にさらされていると述べる。工場閉鎖を含め、不測の事態を想定した対応は、当たり前のビジネス・プランニングとマネージメントだとし、ブレグジットがどうなろうと、企業の構造改革は続くとしている。

Text by 山川 真智子