日産、次期型「エクストレイル」の英生産を中止 「重要な存在」の決断に現地ショック

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 さらに同紙は、欧州では新排ガス基準が施行され、製造コストが上がるため、自動車会社はコスト削減に取り組まざるを得ないと述べる。日産は、新型エクストレイルの製造は日本国内で行うと発表しており、サンダーランドに新ラインを設置するより、すでに製造設備がある日本で作る方が経済的だと同紙は説明している。

 エコノミスト誌は、欧州での新車登録は昨年13%も減っていると指摘する。カルロス・ゴーン氏が目指した数を売って稼ぐスタイルより、現トップの西川氏は、高い利益が上がる車を作る方向へシフトしたとし、ディーゼル車であるエクストレイルをイギリスで作ることは戦略に合わないとしている。さらに、合意なき離脱となれば、イギリスから欧州向けの関税は10%となるが、日本から欧州へは2月に発効した日欧EPAのおかげで、関税ゼロとなることにも言及している。

◆日本式で英進出 いまや立派な地元企業
 国内市場で急成長し、日本の自動車メーカーの超効率的なジャストインタイム生産システムを欧州に輸出しようとしていた日産は1986年に、サンダーランドに工場を構えた。インデペンデント紙によると、もともと北東部は、炭鉱や造船で栄えた地域だが、古い産業の終焉とともに経済も衰退した。地元の期待を背負って稼動した工場は、初年度は500人の従業員で5,000台製造という規模でスタートした。そして2015年には生産は47万6,589台を記録し、現在は6,700人を雇用。サプライチェーンや関連産業も含めれば、さらに4万人の雇用を支えている。新型エクストレイルの生産が始まれば、生産は60万台を超え、雇用も7000人以上となるはずだった(インデペンデント紙、BBC日産サンダーランド・ホームページ)。

Text by 山川 真智子