急落する米最高裁の信用度 崩れたバランス、判事の倫理的問題

最高裁判事9人(2022年10月)|J. Scott Applewhite / AP Photo

 アメリカの連邦最高裁判所といえば、同国司法機関のトップに君臨する権威ある裁判所だ。しかしここに来て、アメリカ人の最高裁判所への信頼度が急落するという事態が起こっている。2022年9月のギャロップ調査によると、「最高裁判所をはじめとした司法機関」を信頼するアメリカ人は47%という低い数字で、1999年の80%から33ポイント、2020年の67%から20ポイントと大幅に下がっている。その理由は何だろうか?

◆相次ぐ保守派判事任命で崩れた公平性
 現在9人の最高裁判事のバランスが崩れたのは、トランプ前政権時に、当時共和党が過半数を占めていた上院で、新しく3人の保守派最高裁判事が任命されたことが発端である。2015年に保守派のアントニン・スカリア判事が急死した後は4人が保守派、4人がリベラル派判事で、当時の最高裁は公平性が高いと思われていた。しかし保守派のアンソニー・ケネディ判事が突然引退し、その後リベラル派のルース・ベイダー・ギンズバーグ判事が死去したことから、トランプ氏が保守派判事3人を最高裁判事として指名することができたという経緯である。

 しかし2020年の大統領選でトランプ氏が敗北し、その後2021年1月6日に連邦議会襲撃事件が発生した後、トーマス判事の妻のバージニア・トーマス氏がその計画に関わっていた疑いが浮上し、トーマス判事の公平性にさらに大きな疑念が生まれた。その後2022年5月には最高裁が1979年の「ロー対ウェイド」判決から続いてきた中絶の権利を覆そうとするアリート判事による判決文草案がリークされ、その後6月にはそのまま、5人の保守派判事による判決が下された。冒頭のギャロップ調査は同年9月に行われたもので、アメリカ人の最高裁に対する不信感が如実に表れているといえるだろう。

Text by 川島 実佳