急落する米最高裁の信用度 崩れたバランス、判事の倫理的問題

最高裁判事9人(2022年10月)|J. Scott Applewhite / AP Photo

◆判事が支持者や法律事務所に不動産売却
 また最近になり、保守派判事と支持者や法律事務所との癒着の構図も明らかになり始めている。トーマス判事はビリオネア支持者であるハーラン・クロウ氏に贅沢な旅行をプレゼントされていたことが明らかになっているほか、『プロパブリカ』の報道によると、同判事はクロウ氏に、自分や自分の家族が所有する不動産3軒を売却したものの、その報告を怠っていた。

 またトーマス判事だけでなく同じく保守派のニール・ゴーサッチ判事も同様に、自分が共同所有する不動産を法律関係者に販売していたことが発覚した。米政治専門サイト『ポリティコ』によると、同判事は2017年、共同所有する住宅を大手法律事務所の最高経営責任者に180万ドルで売却。ゴーサッチ判事は住宅の売却を報告したものの、報道によるとバイヤーの名前を記入する欄は空欄だったという。住宅を購入した法律事務所はこれまで何度も最高裁まで進んだ裁判を担当しており、倫理的な問題が持ち上がっている。

◆最高裁判事にも倫理規定を要求
 アメリカではすべての裁判所判事に倫理規定が課されているが、なぜか最高裁だけは例外で、今までこれといった倫理規定は設けられてこなかったという。しかし、民主党寄り無所属のアンガス・キング上院議員と、共和党のリサ・マーカウスキー上院議員が共同で「最高裁判所倫理規定」法案を提出した。

 また民主党にはトーマス判事の辞任を求めている議員もいるが、トーマス判事に至っては、今後連邦議会襲撃事件の捜査が進めば、妻のバージニア・トーマス氏が罪に問われる可能性がないともいえない。最高裁判所の名誉失墜を避けるためにも、今後、最高裁判事が従うべき倫理規定は必要となってくるだろう。

Text by 川島 実佳