射程1600キロ、ピンポイント攻撃できるトマホーク400発購入予定 米中の見方は?

トマホーク巡航ミサイルを発射する米海軍駆逐艦(2017年4月)|Mass Communication Specialist 3rd Class Ford Williams / U.S. Navy via AP

 岸田文雄首相は2月、政府がアメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の購入を計画していると明らかにした。アメリカとの間で23年度に契約を締結し、400発を取得する予定だ。長距離を攻撃する「スタンド・オフ・ミサイル」をイージス艦に配備し、対中国の抑止力を強化したい狙いだ。

◆1600キロ先の目標を攻撃するトマホーク
 トマホークはアメリカで開発されたミサイルであり、長い射程により敵の射程外から攻撃可能だ。米技術解説誌のポピュラー・メカニクスは、ブロックIVおよびVと呼ばれる最新型では、その射程が1000マイル(約1600キロ)以上に及ぶと報じている。命中精度は指定地点から10メートル以内、GPS誘導の場合は0.1メートル以内という正確性を誇る。アメリカは過去に2000発以上を使用しており、その性能が実戦で証明されている。

 専門家は米ワシントン・ポスト紙(2022年12月12日)に対し、トマホーク搭載に向け既存の駆逐艦を改修することを考慮すると、防衛省にとって10年がかりのプロジェクトになるのではないかとの見解を述べている。

◆中国本土を射程に収める能力で抑止力を高める
 日本側の匿名の関係者はワシントン・ポスト紙に対し、トマホークに白羽の矢が立った理由について、「戦闘での実績がある長距離射撃」の兵器だからだと説明している。これに加え注目されるのが、中国本土への攻撃能力だ。同紙は、現在日本が保有するミサイルについて、日本の領土付近の敵を攻撃するものであると解説している。それに対し、「射程距離が1000マイルを超えるトマホークミサイルは、中国本土の軍事目標を射程に収める」ものであると記事は指摘する。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の日本担当であるクリストファー・ジョンストン氏は、「日本が独立して反撃できるようになることで、東アジアの抑止力に相当な貢献となる」とみる。

Text by 青葉やまと