米国の人手不足の背景 失業給付とホスピタリティ業界の課題
米国で労働者不足が問題となっている。パンデミックで中断・縮小を余儀なくされたビジネスにおいて、多くの労働者が解雇されたが、経済活動が再開した現在、必ずしもその人材は戻らず、とくにレストランなどのホスピタリティ業界ではスタッフの獲得に苦戦しているようだ。その実態と要因とは。
◆パンデミック後の経済と救済措置
米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)の発表によると、パンデミック開始直後の昨年4月時点の雇用状況は、コロナウィルスが大きく影響し、非農業部門雇用者数(nonfarm payroll employment)は約2千万減少、失業率は前月の4.4%から14.7%にまで上昇した。とくに、レジャー・ホスピタリティ業界は大きく打撃を受け、700万(減少率47%)の雇用が減少。そのうちの約7割の550万はレストランやバーなどだった。また、小売業においても210万の雇用減少が記録された。
パンデミックの影響を受けた経済の救済措置として、米国では昨年3月「コロナウィルス支援・救済・経済保証法(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act:CARES法)」が制定され、それにより失業保険が拡充。CARES法では、たとえば、通常の規定では失業保険受給の対象とはならないような小規模事業者オーナー、フリーランサー、ギグワーカーなども手当ての対象となった。さらに、通常の支給額に連邦政府からの週600ドルが加算された。このプログラムは昨年の12月26日までであったが、12月27日に署名された2021年統合歳出法(Consolidated Appropriations Act 2021)を受け、失業保険の特例が2021年3月まで延長された。さらに、2021年1月14日にバイデン大統領が署名した米国救済計画(American Rescue Plan)により、本年9月までの延長となった。12月27日以降の加算金額は、週300ドルに変更された。
これら3つの経済対策法案により、通常の失業保険対象者は最大で53週、追加で約2万ドル(約220万円)、特例で対象となったギグワーカーなどは、最大85週、追加で約4万ドル(約440万円)を受け取ることができるという計算だ。ちなみに、通常の失業保険プログラムの支給条件、金額、支給期間などは州によって異なる。失業以前の収入などによって決定される支給額の最大額が最も高いのはマサチューセッツ州で、その額は週855ドル。最大支給期間は52週だ。最大支給額が全州の中で最も低いのはミシシッピ州で週235ドル。参考までに、カリフォルニア州は週540ドル、最大支給期間は26週である。
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