コロナ禍・学校教育の遅れを取り戻す 独政府、2700億円の財政支援
ドイツ連邦教育研究省は5月5日、コロナパンデミックによる学校閉鎖やデジタル教育で発生した学習の後れを取り戻すための財政支援「キャッチアッププログラム」が政府閣議で決定されたと発表した。支援額は20憶ユーロ(2680憶円)。この支援措置案は、アニヤ・カルリチェック連邦教育研究大臣とフランツィスカ・ギフィー家庭大臣が推進した。今後連邦議会で可決、連邦参議院で承認されれば、2021年度新学期より適用される見通しだ。
◆学習障害の軽減
キャッチアッププログラムの目的は、「度重なるロックダウンを経て、徐々に通常の日常生活に戻っていく子供たち、若者、その家族を支援すること、パンデミックによる学習の遅れや精神的な負担とストレスだけでなく、友達と長時間会えない、スポーツができないなどの痕跡が子供の傷となっている現状を改善するため」とされている。
総額20憶ユーロの使用先は「学習障害の軽減」と「社会的措置」が主軸となる。連邦政府は全16州へ支援金の配分をし、各州の教育担当関係者が教育環境の整備をする。この支援はいまのところ、21年秋の新学期から22年夏の学期末までの期間限定とされている。
1)10億ユーロは、9月からの新学期授業に付随するドイツ語や数学、外国語の主要科目におけるパンデミックに起因する学習障害を軽減するための支援策(家庭教師やサポートプログラム)に充てる。
2)さらなる10憶ユーロは、人格形成のための課外授業支援や、夏休み中のサマーキャンプ、学習ワークショップ、子供や若者が受けた心理的危機の影響を和らげるための社会的措置として使用する。これには幼児教育、スクールソーシャルワーク、レジャー分野の既存プログラムの増加も含まれる。
ハルツIV(求職者基礎保障)に依存している家庭と貧困家庭の子供たちには、1人当たり100ユーロの一回限りの財政支援も組まれている。この特別支援金を、子供たちのための休日やスポーツ、レジャーなどの活動に充てることにより、余暇時間の充実を図る。
ドイツ国内の生徒数は約1100万人に上り、そのうち20~25%の子供たちがロックダウンにより学習で後れを取っている。ドイツでコロナ禍が始まって1年が過ぎた現在、3人に1人の子供が心理的な問題を抱えていることが明らかになっている。
ドイツの全州で初めて学校閉鎖が決定したのは2020年3月13日だった。それ以来、長引くコロナパンデミックでとくに打撃を受けたのは、小学校低学年と大学入学資格試験や職業資格試験を控える最終学年生だ。自宅で勉強に集中する環境や設備が整っていなかったり、親のサポートを期待できない子供にとっては、今後の学校生活の行く末が案じられている。
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