無視できない近未来の課題、ブロックチェーンの環境への影響
ビットコインやNFT(Non-fungible Token:非代替性トークン)など、ブロックチェーン技術を活用した取引市場が盛り上がる一方で、取引における多大な電力消費と環境負荷の問題が指摘されている。その実態とは。
◆ビットコインやNFTに対する環境負荷への懸念
ビットコインやNFTがこれからの新たな取引手段として注目されると同時に、その電力消費の実態と環境負荷への影響も明らかになりつつある。ケンブリッジ大学が公表しているビットコインの電力消費に関する指標「Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index(CBECI)」によると、現在の電量消費ベースの推計で、ビットコインは年間140.25TWh(テラワット・アワー)分の電力を消費している。この電力消費量は、世界各国と比較したランキングでは第27位で、スウェーデン、マレーシア、エジプトなどの年間電力消費量と並ぶ数字である。
また、Digiconomistの調査報告では、ビットコインの一取引は、米国一般家庭の電力消費の約39日分に相当し、二酸化炭素排出量はビザカード取引1,208,218回分、YouTube動画の90,857閲覧時間分に相当するとされている。ビットコインはマイニングが必要ということで、同様のプロセスが必要な金の採掘と比較すると、1ビットコイン分の金の採掘にかかる二酸化炭素排出量が18トンに対し、ビットコインのマイニングは158トンで、金の8.8倍もの排出量をともなう。
研究によって電力消費量や二酸化炭素排出量の推計数字は異なるものの、ビットコインのマイニングと取引が多大な電力消費を伴うということは事実のようだ。クラブハウス上での公開インタビューで、ビル・ゲイツもこの事実に対しての懸念を表明した。サステナビリティやSDGへの意識が高まり、株主やステークホルダーが環境問題への対策を要求するなか、企業にとっての環境問題対策や二酸化炭素排出量削減・オフセットの取り組みの重要度が増している。こうした状況下において、ビットコインなどの仮想通貨取引に伴う環境負荷という問題は会社戦略における矛盾の種になりかねない。ビットコインなどの仮想通貨に対して大々的に支持を表明してきたイーロン・マスクも、突如その姿勢を一転させるかのように、環境負荷の懸念を示し、上昇し続けてきたビットコインの価格は大幅に下落した。
さらには、この課題はビットコインだけのものではない。デジタル作品の新たな市場創出の可能性としてにわかに注目を集めているNFTの取引に使われている仮想通貨イーサリアムもビットコイン同様に多くの電力消費と二酸化炭素排出を伴う。デジタル・アーティストの画期的な救世主のように扱われているNFTだが、環境負荷というネガティブな側面も無視できない状況だ。
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