9.11から19年 米国の対中シフトが生むリスク

Mark Moran / The Citizens' Voice via AP

 9.11アメリカ同時多発テロから先週金曜で19年となった。来年にはちょうど20年となる。11月の大統領選を控えるトランプ大統領とバイデン氏はそれぞれ、ペンシルベニア州にある慰霊碑を訪れた。トランプ大統領は今月、イラク駐留米軍を5200人規模から3000人規模にまで縮小することを発表したが、米国はますます「対テロ」からの撤退を進めている。しかし、9.11から19年が経った現在、テロの脅威は収まったと本当に言えるのだろうか。米国はテロの脅威から本当に解放されたのだろうか。安全保障上の米中対立の最前線である日本では対中国の議論が大半を占め、国際的なテロ情勢が報道されることは大幅に減ったが、現状はどのようになっているのか。

◆依然としての残るテロの脅威
 近年の日本の安全保障を考えると、北朝鮮の核・ミサイル、中国の海洋覇権など、安全保障上の議論がそれ中心となるのは必然的な流れであり、筆者も違和感を覚えない。だが、「米国はテロの脅威から本当に解放されたのか?」との疑問は、海外に散らばる100万人以上の海外邦人の安全・保護という重要任務と重複する。

 テロリズムに関する論文や研究機関の調査分析、そしてテロ組織の発信などを網羅的に観察しても、アルカイダやイスラム国に代表されるジハーディストの脅威が収まったといえる状況ではない。

 9.11以降、オサマ・ビンラディン以下アルカイダの多くの幹部は殺害されたが、アフガニスタンでは数百人レベルで活動を続けているとの分析もあり、イエメンの「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」や北アフリカの「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」、シリアの「フッラース・アル・ディン(Hurras al Dine)」、ソマリアの「アルシャバーブ(Al Shabaab)」、サヘル地域の「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」など地域の支部組織は依然として根強い。アラビア半島のアルカイダは9.11に合わせてメッセージを発信し、「米国は対テロ戦争の長期的な敗者であり、世界中にある米国権益を狙え」と支持者たちに呼びかけた。アルシャバーブも動向に米国権益を攻撃する趣旨のメッシージを繰り返し発信しており、アルカイダ系組織が9.11規模のテロを実行できることは考えにくいとしても、依然として米国を攻撃する「意思」は発信し続けており、これは9.11テロ時と変わるものではない。ちなみにイスラム国系のメディアも、9.11テロに言及するメッセージを先週発信している。

Text by 和田大樹