「女性リーダー」は賞賛されるべきなのか いま求められるリーダーとは

Mark Mitchell / New Zealand Herald via AP

 新型コロナウイルス対策が成功している国の共通点として、国のトップが女性であることが注目されている。政界・経済界のリーダーに女性が少ないからこそ、「女性リーダー」の活躍が強調されることはある意味自然な流れかもしれない。一方、成果を出して支持されるリーダーたちが持つ資質や能力を、女性・女性らしさという視点で賞賛することは、リーダーシップやダイヴァーシティの本質的議論から、我々を遠ざけてしまうリスクをはらむ。

◆それぞれに異なる統治背景
 ニュージーランドのアーダーン首相、ドイツのメルケル首相、台湾の蔡総統、フィンランドのマリン首相、デンマークのフレデリクセン首相、ノルウェーのソルベルグ首相、アイスランドのヤコブスドッティル首相、シント・マールテンのヤコブス首相。コロナ危機への対応が評価され、こうした様々な国のリーダーたちが注目されている。

 しかし、彼らが全員女性だという事実は、ただ一つの要素でしかない。国のトップになりえた背景、統率する国の事情や国民性など、彼らがリーダーとして存在し、活躍している背景や文脈はそれぞれ異なる。それぞれの文脈があってこその、政治手腕と統治力だろう。

 たとえば、アーダーンとメルケル。アーダーンは2017年10月、ニュージーランドの政治史上最年少の37歳で首相就任。任期中に産休を取得したことなどでも話題になった。一方、メルケルは2005年11月から現在まで、4期に渡り15年間首相を務め、自国ドイツだけでなく欧州のリーダーとして長年活躍してきた。すでに退任を表明しているが、近年では移民政策などでも注目された。東ドイツ育ちで、物理学者としてのバックグラウンドを持ち、専門家の知見と科学的論拠に基づいたコロナ対策が評価されている。

「メルケルの統治のしかたは、アーダーンとは異なる。アーダーンのスタイルは、カナダのトルドー首相により近い。アーダーンもトルドーも、自身の社会課題や環境問題に対する意識とマイノリティに配慮したコミュニケーション能力に重きを置いていることが売りだ」と英国人ジャーナリスト、ヘレン・ルイスは分析する(米アトランティック)。

 トルドーは、2015年に就任して以来、トランプ大統領の移民政策などで分断が強調される米国とは対照的に、インクルーシブで多様なカナダを発信してきた。また、自国や他国の文化を讃える姿勢もしばしば見られる。

Text by MAKI NAKATA