大量廃棄される生ビール コロナ封鎖に泣く米ビール業界

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 バーやレストランが閉店し、大規模イベントも軒並み中止されているアメリカで、大量の生ビールが行き場を失っている。ロックダウンが始まる前にすでに製造され、樽詰めされていたビールは賞味期限が迫っており、生産者はあの手この手で廃棄を免れようとしている。

◆封鎖で消費激減、賞味期限近づく
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は、コロナ危機は食品や飲料生産者に混乱をもたらしていると述べる。パンデミックがもたらした突然の需要増大で供給が追いつかない商品がある一方、レストラン、オフィス、学校の閉鎖で余った大量の野菜、肉、牛乳などは、急に小売店に回すこともできず廃棄されているという。

 ビール業界も類似のジレンマを抱えており、全国ビール卸売業者協会(NBWA)によれば、すでに3月だけで1000万ガロン(約3800万リットル)、樽に換算すると100万個分の生ビールが廃棄されたと見られる。毎年大量のビール消費が期待される、聖パトリックの祝日のパレード、NCAA男子バスケットボール・トーナメントも中止となり、スタジアム、コンサートホール、レストランやバーの閉鎖で、倉庫や醸造所には大量のビールが残っている。樽生ビールがおいしく飲める期間は2~6ヶ月という。売れ残り、賞味期限切れとなったビールが業界にもたらすコストは、10億ドル(約1070億円)に上ると推定されている(WSJ)。

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Text by 山川 真智子