EVは環境問題の救世主ではない 抱えるさまざまな問題点

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 国際エネルギー機関によれば、世界の道路を走る電気自動車(EV)の数は300万台を超え、2030年までには1億2500万台に達すると予測されている。多くの国が、将来的にはガソリン、ディーゼル車をなくし、市場を電気自動車に移行させようとしているが、「クリーン」という名の裏に隠れた、さまざまな問題が指摘されている。

◆児童労働も 途上国で払われる犠牲
 EVに搭載されるバッテリーには、さまざまな鉱物が使われている。コバルトもその一つだが、アムネスティ・インターナショナルによれば、コンゴ民主共和国(DRC)でのコバルト採掘が人権問題を引き起こしているという。世界のコバルトの半分以上はDRC南部で採掘されており、その20%は小規模鉱山からのものだ。ここでは児童労働が行われており、7歳の子供も確認されている。年端もいかない子供の稼ぎは1日1ドル(約108円)しかないうえに、鉱夫はコバルトの埃にさらされることから、慢性的な肺疾患に苦しんでいると同団体は報告している(世界経済フォーラム、以下WEF)。

 世界で生産されるコバルトの60%はバッテリー製造に使われている。DRCのように、バッテリーに必要な鉱物採掘のため、児童労働、健康被害、貧困や汚染など、人や環境が犠牲になっており、鉱物の出所を明らかにするトレーサビリティの強化をアムネスティは求めている(同上)。

Text by 山川 真智子