シャングリラ会合、今年も米中が対立……それでも会議が果たす重要な役割とは

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5月31日から6月2日にかけて、シンガポールでアジア安全保障会議、通称
シャングリラ・ダイアローグが開催された。シャングリラ・ダイアローグは毎年この時期に、シンガポールにあるシャングリラホテルで開催されることからそう呼ばれている。この会議には、日本や米国、中国や韓国、オーストラリアや東南アジア諸国の政府高官や防衛当局者らが参加し、各国が自らの防衛、安全保障上の主張を繰り広げ合う場となっている。この3日間で、各国からどのような主張が聞かれたのだろうか。

◆台湾や南シナ海で譲らない中国
 全体を見て、まず注目するのは中国の主張だ。中国の魏鳳和国務委員兼国防相は2日、台湾問題に言及し、「もし台湾を中国から分離させる動きがあるならば、中国軍はいかなる犠牲を惜しまず全力で戦い抜く」との意志を示した。これは台湾が北京の核心的利益であるとの意思を改めて示したことを意味し、米国や日本を強く牽制することになった。

 また、フィリピンやベトナムなどの東南アジア諸国と領有権を争う南シナ海情勢についても、「我が国が領有権を有する場所で人工島などの建設を行っても、それは正当な主権だ」と主張し、フィリピンやベトナムを牽制した。

 一方、この両国やインドネシアの国防大臣からは、「中国は九段線の無効を言い渡した2016年の仲裁裁判を認めていない」「このままだといっそう緊張が高まる」など強い懸念が示された。

 とはいえ、近年のシャングリラ・ダイアローグでの中国の主張はこのような感じで、今年も予想されたような主張となった。

Text by 和田大樹