シャングリラ会合、今年も米中が対立……それでも会議が果たす重要な役割とは

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◆中国への強い懸念を示す米国
 一方、米国のシャナハン国防長官代行は1日、南シナ海で人工島建設や軍事拠点化を着実に進める中国に懸念を表明し、「中国はルールに基づいた行動をとっていく必要があり、それまで我々は中国を信用することはできない」との意思を示した。また、中国と平和的に問題を解決していく意思も示したが、米国側の主張も近年はこのような内容が続き、今年も予想されたような内容となった。

 近年のシャングリラ・ダイアローグでは、米中両国が相互を牽制し、その他の国々が米中を交えた衝突の懸念を表明するというのが、一種のリズムになっている。

◆シャングリラ・ダイアローグの意義とは
 今年のダイアローグで、何か新しい動きが表面化したというわけではない。しかし、シャングリラ・ダイアローグの役割は極めて大きい。現在、この会議には大臣レベルも出席し、インド・太平洋地域の安全保障においてはもっとも大きな国際会議でもある。そういう場で、対立が深まる米国と中国の防衛幹部たちが、お互いの主張を目の前で聞き、また、直接会って色々と議論を重ねることには意義がある。安全保障という国家の根幹をなす重要な問題であっても、それを動かすのは防衛当局者、政策担当者であり、相互の個人的な関係も大きく影響する。

 仮に、今後のシャングリラ・ダイアローグで両国の一方が参加しないなどの事態があれば、米中間の衝突を懸念する国際社会の声はいっそう高まることだろう。大きな変化が見られなかったとしても、対立が高まるなか、米中両国の防衛関係者が顔を合わせるというだけでもシャングリラ・ダイアローグの政治的意義は大きい。

Text by 和田大樹