イケアがアフリカのクリエイターと商品開発に取り組む理由 「あらゆる場所」を世界の日常へ

© Inter IKEA Systems B.V.

 スウェーデン発祥のイケア(IKEA)が、今年6月に開催された同社のイベント「Democratic Design Days 2018」にて、アフリカ各国の10名のデザイナーらと共同開発したコレクションÖVERALLTを発表した。「デモクラティックデザイン」という考え方に基づき、常に世界中に目を向け、各地のデザイナーらと協業し、新しいデザインの視点を取り入れ続けている同社が、いまアフリカデザインに着目する背景には、アフリカの各都市で勃興するクリエイティブ活動がある。

◆アフリカのクリエイターからイケアと世界が学ぶ、日常生活のデザイン
「イケアは、アフリカの各都市で、いま沸き起こっているクリエイティブな「爆発」が気になっています。我々はこの「爆発」から学びを得たいですし、世界に広めていきたいわけです。(アフリカの)デザイナーやクリエイターたちとの協業は、こういったことを実現するための機会なのです」イケアのヘッド・オブ・デザインを務めるマーカス・エングマン(Marcus Engman)は、今回のコラボレーションに際して、このようにコメントした。

 アフリカ人クリエイターの目線に立てば、クリエイティビティは昔からそこにあり、クリエイターたちは常にアフリカ大陸に存在していた。アフリカ各国の経済成長やインターネット、スマートフォンの普及に伴うアフリカ大陸からの発信力の高まりと、欧米を始めとする先進国の経済発展やクリエイティブ活動の相対的な鈍化によって、欧米がようやくアフリカのクリエイティビティに目を向け始めたというのが実際のところかもしれない。

 今回、「Democratic Design Days 2018」でお披露目されたのは、「あらゆる場所」を意味するスウェーデン語ÖVERALLTと名付けられたコレクションだ。デザインチームには、アフリカ側はコートジボワール、エジプト、南アフリカ、ケニア、セネガルの5ヶ国から、イケア側もフランス、フィンランド、スウェーデンからのインハウスデザイナーが参加するという多国籍構成。

 アフリカ人クリエイターの領域も多様で、南アフリカ人のラデュマ・ノゴロ(Laduma Ngxokolo)やセネガル人のシェリ・ラビ・ケイン(Selly Raby Kane)のように、それぞれ世界的に展開するファッションブランドを手がけるデザイナーや、コートジボワール人のイッサ・ディアバテ(Issa Diabaté)などの建築家も参画している。

 今回のコレクションで、ケインはセネガル伝統のバスケットや髪の毛の編み込みをモチーフにしたバスケット、ノゴロは自身のブランドのシグネチャーにもなっている、南アフリカのコサ族の織物にインスパイアされた幾何学模様を使ったラグ、ディアバテはイスのデザインに貢献した。

ケイン氏によるバスケット © Inter IKEA Systems B.V.

ディアバテ氏によるイス © Inter IKEA Systems B.V.

 ÖVERALLTのデザインインスピレーションは、文化を超えて人々が共通で行うようなこと、つまり「現代都市の暮らしの慣習儀礼(modern urban rituals)」や、家でくつろぐために日々使うようなものだという。このコレクションの商品を(日常で)使う人までもが、デザインプロセスの一員になれる可能性がある、とイケアは説明する。究極的には、イケアストアが近くになかったとしても、作れてしまうぐらい手軽で簡易的なデザインが検討されたという。

Text by MAKI NAKATA