AIによる偽の性的画像、成人の7%が被害 男性は女性の2.7倍の申告率

Prostock-studio / Shutterstock.com

生成AI(人工知能)を使い、本人の同意なく性的な画像や動画を作成する「性的ディープフェイク」。その被害は、著名人だけの問題ではない。

オーストラリア、イギリス、アメリカの成人7230人を対象とした調査で、7%がAIで生成された偽の性的画像に関する被害を経験したことがあると回答した。さらに、被害者の約87%が、健康や人間関係、仕事など、生活の何らかの面に影響があったと答えている。

この研究は、オーストラリアのRMIT大学が11月4日に発表したもので、論文は学術誌『International Journal of Human–Computer Interaction』に掲載された。

◆男性の被害申告率は女性の約2.7倍
研究チームは2024年7〜8月、3か国の18歳以上の男女を対象にオンライン調査を実施した。

調査では、本人の顔や身体などを利用した性的な偽画像をAIで無断作成された経験や、そうした画像を同意なく共有された経験、拡散すると脅された経験について質問した。

その結果、7%が18歳以降に少なくとも1種類の被害を経験したと回答した。国別ではイギリスが9.3%と最も高く、オーストラリアが7.7%、アメリカが6.5%だった。

特に意外だったのが男女差だ。被害を申告した割合は男性が10.2%、女性が3.8%で、男性は女性の約2.7倍に上った。

年齢による違いも大きく、35歳未満では15.1%が被害を報告したのに対し、35歳以上では3.6%だった。

ただし、研究チームは、この数字が実際の被害全体を反映しているとは限らないと指摘している。

例えば、嫌がらせや恐喝、いたずらを目的とした偽画像は、標的となった本人に直接送りつけられることがある。一方、性的な目的で作られた偽画像は、本人の知らないところで作成・共有される場合もある。

このため、男性の方が被害を認識しやすく、調査で申告する割合が高くなった可能性もある。

◆女性の方が深刻な心理的影響を報告
被害経験を申告した人の90.3%は、怒りや屈辱、不安など、少なくとも一つの否定的な感情を抱いたと答えた。

男女で比較すると、否定的な感情だけを報告した割合は女性が87.6%、男性が71.2%だった。

特に差が大きかったのが、身の安全に対する恐怖だ。女性の被害者の42.4%が身の安全に不安を感じたのに対し、男性では18.1%だった。

精神的な健康に悪影響があったと答えた割合も、女性は35.5%、男性は16.0%と、大きな開きがあった。

被害はオンライン上だけで完結するわけではない。人間関係の悪化や仕事への影響、金銭的な損失などを報告した人もいた。

イギリスの18〜24歳の女性は、被害について「あっという間に起きた出来事だったが、その後の影響は耐え難いほど長く続いた」と振り返っている。

さらに、一部の被害者は、周囲に相談しても「本物の画像ではない」ことを理由に、被害を軽く受け止められたという。

◆被害を防ぐために何が必要か
今回の調査では、被害者の55.6%が、加害者について「オンライン上でしか接点のない人物」と回答した。

被害への対応として最も多かったのは、相手をオンラインサービス上でブロックすること(69.2%)。次いで、サービスの運営会社への通報(56.8%)だった。

また、同じ調査データを使った別の研究では、回答者の3.2%が、AIで作られた性的画像を本人の同意なく作成・共有したり、拡散すると脅したりした経験を申告した。別の分析では、成人の約5人に1人が、実在の人物を描いたAI生成の性的画像を意図的に閲覧したことがあると答えた。ただし、この閲覧率は、本人の同意なく作られた画像に限定したものではない。

研究を主導したRMIT大学のニコラ・ヘンリー教授は、AIを悪用した画像被害が、著名人や公人だけでなく、社会の幅広い人々に及んでいる実態が明らかになったと指摘する。

「実際の被害規模はさらに大きい可能性がある。自分の画像がAIで作成されたり、共有されたりしても、それを知らない人がいるためだ」と説明している。

ヘンリー教授は、被害が発生した後に対処するだけでは不十分だと強調する。法規制に加え、教育や被害者への支援を充実させるとともに、AIの開発企業やオンラインサービスの運営会社が、被害を未然に防ぐ安全対策を講じる必要があるとしている。

なお、今回の調査は2024年に実施されたもので、日本は対象に含まれていない。また、研究はグーグルの資金提供を受けて実施され、同社の研究者も参加している。

Text by 白石千尋