大盛況のカナダの草間彌生展 世界的「ドット」と現地をつないでほしいアート関係者
カナダはトロント市のアート・ギャラリー・オブ・オンタリオ(AGO)で今月3日から開催されている草間彌生展が大盛況を見せている。現代で最も有名(そして高額)な女性アーティストとしてカナダでも広く知られる草間のショーは、5万枚ものチケットが発売後瞬く間に完売。AGO史上最大のショーになるだろうと言われている。
ワシントンD.C.、シアトル、L.A.に続き、北米で4ヶ所目となるトロントのショー。チケットはカナダ国外からも購入されているが、クラシファイドなどで転売されているものもあるようだ。3月10日のチケットがアメリカのイベントサイトで250米ドル(約2万6000円)で販売されていたという(元値は30カナダドル(約2400円))。AGOはダフ屋や偽チケットなどにも注意を呼びかけている(トロント・スター)。
◆「無限の鏡」閲覧時間は20秒
ショーの目玉となっているのは「インフィニティ・ミラー」とよばれる6つの小部屋。草間のシグネチャーである水玉のかぼちゃや光などがいっぱいの部屋の全方向に鏡が張り巡らされ、双方が反射して空間が無限に広がっているかのように見える。一部屋3人に限られた訪問者は各部屋に20〜30秒しかとどまることができない。チケット入手の困難さや行列などの前評判に加え、「インスタ映え」しそうな幻想的な空間に、訪問者のほとんどはその20秒をセルフィー(自撮り)に費やす。AGO職員のハーマン・ローも、「ふだんセルフィーを撮らない私でさえも、携帯電話を取り出してしまった」と言う(CBC)。
こうしてセルフィーがSNSに溢れかえるわけだが、カナディアン・アート誌のオンライン編集者のリア・サンダルズ氏はこのような現象にうんざりしているとCBCに語る。SNSでシェアされることにより、ショーの評判はどんどん広まりさらなる人を呼び込むが、これは「国際的名声獲得に執着しすぎる」という同ギャラリーに対するかねてからの批判につながる。サンダルズ氏は、草間の「ドット」を地元アーティストにつなげることをしないAGOにがっかりしているようだ。
「大物にスペースを提供するたびに、あまり知られていないアーティストがそのスペースを使えないということになる」とサンダルズ氏。AGOは、草間の影響力を借りて、彼女目当てに初めてギャラリーにやってくる大勢の人のために、例えば、草間と同じ80代のカナダ人女性彫刻家、Rita Letendre や Katie Oheの作品展を併設することもできただろう、と指摘。
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