慰安婦報道めぐり、日本メディアに海外から檄 「政府の飼い犬ではなく監視役となれ」

 従軍慰安婦報道に関し、半年で2社の新聞社が謝罪を表明したことが、海外で注目を集めている。

 読売新聞社は先月28日、同社発行の英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現ジャパン・ニューズ)が1992年から2013年の期間、従軍慰安婦問題を報道する際に「性奴隷」(sex slave)などの不適切な表現をしていたとして、謝罪記事を掲載した。

◆自発的?強制的?
 また朝日新聞は8月、韓国で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言を虚偽と判断し、関連記事を取り消して謝罪した。これを受けて日本政府は10月、1996年に国連人権委員会(当時)が採択した従軍慰安婦に関する報告(クマラスワミ報告)について、国連人権理事会に内容の一部撤回を要請した。

 しかし、同報告は女性達の証言と公文書に基づいているとして、著者のラディカ・クマラスワミ氏は要請を拒否した。実際、同報告は、吉田氏の証言について大きく取りあげておらず、真偽に疑問があるとも併記していた。

◆安倍政権の対メディア姿勢に疑問か
 第二次安倍政権発足以来、慰安婦問題を否定しようという動きがあるとして、エコノミスト誌などから批判が出ている。ディプロマット誌(Ricky Hough氏)は、臆面もない国家主義が台頭している、と手厳しい。

 最大20万人いると言われている従軍慰安婦は自発的な娼婦だった、という安倍政権の主張は全くバカげている、とコラムニストのウィリアム・ペセク氏がブルームバーグ・ビューで批判している。歴史家の和田春樹氏もエコノミスト誌でこうした主張を否定している。

 なお20万人という数値の根拠には疑問が呈されている。確かに一部右派が、慰安婦は全員娼婦だったと唱えているが、安倍首相がそうした主張を行った記録はない。今年3月には、河野談話を見直さないことを明言している。

◆ウォッチドッグ(監視役)となれ
 ペセク氏は、安倍政権の歴史修正の動きに加え、日本メディア「いじめ」に懸念を示している。慰安婦報道に関する朝日批判や、選挙に関する公正な報道要求文書などを指している。
 
 安倍首相は、朝日新聞の報道が隣国との関係を損ない、海外における日本のイメージを傷つけた、と名指しで批判したとエコノミスト誌も報道している。

 一方同氏は、日本の主要メディアも、人々の知る権利よりも、社会的調和や政治家や会社の取締役たちとの関係を優先してきた、と厳しい。気骨がありオープンなメディア以上に安倍氏の改革に役立つものはない。何でも言いなりになる飼い犬ではなく、真の監視役となる番犬の様なメディアが必要だ、と同氏は結んでいる。

Text by NewSphere 編集部