巧妙化する中国の反日プロパガンダ、舞台は世界へ 海外メディアも注視

 ニューヨーク・タイムズ紙は、韓国の要請で中国ハルビン駅に先月オープンした安重根記念館が、中国人訪問者にも支持されている様子を伝えた。記事は、記念館に反日プロパガンダ的意図があることを示唆する論調である。

 一方で別の記事では、中国国内で露骨な反日プロパガンダ番組が横行する現状を、中国人作家が憂えている。

【テロリストか東洋の志士か】
 韓国人・安重根は薬指を詰めて「韓国独立」の血盟を結んだ反日武装グループ、「断指同盟」のリーダーであった。1909年、日露戦争後の両国権益についてロシア外相と会談すべくハルビン駅を訪れた伊藤博文を射殺し、翌年処刑された。日本では菅官房長官らが単なるテロリストと評しているが、韓国では英雄視されている。

 昨年6月、朴槿恵・韓国大統領が習近平・中国主席と会談時に、記念館の設置を要請した。同紙は、朴槿恵大統領に好感を持っていること、反日プロパガンダ戦略に合致すること、米同盟仲間である日韓間にクサビを打ち込めることから、習近平主席は即座に快諾したと説明している。中国で外国人の記念施設は異例とのことである。

 むろん記念館は安重根について「学究的で真剣、勇敢な自由の戦士」と肯定的な内容で、個人としての行為ではなく祖国の独立と東洋の平和を願う韓国義勇兵としての行為だ、との安重根の主張を強調しているという。中国人の訪問客らは「これはヒロイズムに国境がないことを示しています」「日本は今や危険ではなく、日本はただ逃げるばかりです。中国と比較すると、日本はむしろ弱いです」などと語っている。

【ばかばかしいプロパガンダ漬けに染まる中国人】
 中国の現状に批判的な中国人作家、慕容雪村氏は、ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、中国のテレビ番組が荒唐無稽な内容の反日プロパガンダ番組にあふれており、それで実際に中国人の若者が暴走、盲目的な反日暴動に至っていると嘆いた。
 また、反日テーマに便乗しただけの粗製番組の乱発が、かえってプロパガンダの説得力を奪っている、との危惧が中国国内にもあると言われる。

 氏の幼少時(1970年代)、テレビが地方に普及していなかった時代もプロパガンダ映画の屋外巡回上映などは頻繁にあったが、最近の番組も「カラフルで俳優の見栄えも良いが、テーマは同じまま」であるという。中国政府は「民族憎悪を扇動」するコンテンツを禁止しているにも関わらず、2012年には70以上の反日テレビシリーズが中国で放映され、2013年3月には48の反日番組が浙江省の横店映画村で同時に撮影されていた。

 こうしたプロパガンダは軍に好意的な声を増大させる。中国政府は繰り返し東京を「軍国主義」と批判しているが、ならば自らのプロパガンダ政策はどうなのか、と氏は断じる。

【巧妙化する国際世論攻勢】
 またウォール・ストリート・ジャーナル紙はヴォルデモート卿論争事件など、良く訓練された中国外交官らが国際世論に訴える活動を活発させてきた経緯も報じる。論旨はやや判りにくいが、以前と違い余裕の出て来た中国は、プロパガンダをただ無差別にばらまくのではなく、その説得力を重視し、時には自ら扇動した国内暴動を批判して見せるようにもなった、とのことのようだ。

「反日プロパガンダ」の読み解き方

Text by NewSphere 編集部